奈良岡朋子さんにロングインタビュー

楽屋訪問1

劇団民藝「アンネの日記」鳴門例会(2003年4月11日)に出演される奈良岡朋子さんを公演前に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

鳴門市民劇場(以下鳴門) 1400回余りのステージ数を誇るこの作品には特別な思いがありますか?

奈良岡(敬称略) 菅原卓先生が手がけられて以来、重いテーマではあるけれどいつの時代にも多くの人に観てもらえる作品として劇団民藝が大切にやり続けている作品です。私は最初ミープ役をやりました。キャストは時代と共に変わっていますがその都度その都度きちんとした芝居をするようにしています。特に若い人たちに観てもらいたい。いつの時代にもそれなりに観客の心に残ればと・・・

鳴門 「世界わが心の旅」出演のきっかけと、旅の前後での芝居における変化を。
(※「オランダ〜アンネと同じ年にうまれて〜旅人:奈良岡朋子」のタイトルで2003年2月9日にNHK BS2で放送された番組)

奈良岡 出演要請があったのが丁度「アンネ」への再出演と同時期だったので36年ぶりにゆかりの地を再訪することにしました。ミープさんにお会いできたことは大きな収穫。その他の情報はすべて初演の際に集めていましたから今回特に目新しいことがあったとか演技に影響したとかいうことはありません。ただ今回は演出家の丹野をはじめ全体が若く、"はずみ"がついたものになっています。今回のものが一番分かりやすいと言ってくださる方も多い。時代と共に観客の生活リズムも変わっているからでしょう。

鳴門 番組の最後に(戦争体験を)伝えなければいけないということをおっしゃっており、似た世代として非常に共感しました。

奈良岡 「アンネの日記」に限らず、私は人間が生きていく上での当然の権利をゆがめられることは間違っている・・・ということに関わった作品を取り上げています。たとえば、「ホタル」という映画にも自らすすんで出演を希望しました。年を重ね余計に感じることですが、この先限られた時間を、自分の仕事=演じることを通して観客に声を伝えていくことに費やしたい。だけどその作業は淡々とやっているのです。受け入れる側に受け入れ体制がないと仕方ない。こういう作品を観た若い人が,何年か先に生きることとは、平和とは何かを考えることにつながっていけばいいと思っています。時間をかけて大切なことに気づいてほしいですね。

鳴門 あの旅には、親友美空ひばりさんのかばんを持っていかれましたね。

奈良岡 彼女が私との旅のためにあのかばんを用意していたことは他の番組で初めて知ったのです。彼女の「一本の鉛筆」という歌があの旅のテーマに関連深かったので番組に取り入れました。でも、実は放送後にたくさん寄せられた番組の感想には、「ひばりさんのエピソードはなくてもよかった」というものが多く、「アンネ」というテーマに集まった関心がいかに大きいものだったかということがわかりました。

鳴門 番組の最後に奈良岡さんがおっしゃった「忘れちゃいけないのよね、忘れちゃうけど」という言葉も非常に心に残っています。

奈良岡 すべてあの旅のあの場で口をついて出た言葉。生き方がきちんと一貫していないと言葉も嘘になりますけどね。

鳴門 最後に、「アンネの日記」では主役二人が新人の方ですが劇団の中で若い人を育てることに関してお話をきかせてください。

奈良岡 人を育てる難しさはなにも役者の世界に限ったことではなく、特別なことは何もありません。普通の若者もそうであるように個性を塗り替えるのは難しい。その子のよさを見抜く目が大事でしょうね。簡単なことじゃないですけど


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