明石原人〜ある夫婦の物語〜

劇団民藝 公演

2006年9月9日(土)鳴門市民劇場例会


出色の舞台 ものがたり  
キャスト スタッフ 上演予定

「私生活」ちらし

出色の舞台

渡辺 保

  「明石原人」は、今は伝説となった明石原人の化石を発掘した直良信夫とその妻の夫婦愛を描いた伝記劇である。

  しかし表面的には伝記劇でありながら、そこにはもう一つの主題がある。その主題はアカデミズムの体制と一民間研究者にすぎない直良信夫との戦いてある。国立大学の派閥は民間人の研究を認めようとしない。その背後には学者と皇国史観の政治体制との癒着がある。終幕、直良信夫は早稲田大学の谷崎精二によって文学部から博士号を与えられる。なんという皮肉な結果だろうか。しかし小幡欣治の描く直良信夫には、明石原人は自分の心の中にある、自分の人生はこれでよかったのだという、哀しくもまた一種の達観があって、その心境が観客の胸を撃つ。彼は十分に体制と戦ったからである。

  この体制と個人の戦いは、現代の日本にも随所にある。明石原人は伝説になったとしても、この直良信夫の戦いは伝説ではない。劇団民藝がそういう今日の社会へのメッセージを発信したのは、実に久しぶリといわなければならない。

  丹野郁弓の演出がドライで爽やかで、このメッセージをうきぼリにした。日色ともゑ、南風洋子はじめ出演者もいい。ことに直良信夫を演じた千葉茂則が出色の出来であった実力あふれる上出来。

「テアトロ」2004年5月号よリ
舞台写真1


ものがたり

  明石の女学校教師・直良音(なおら・おと)を、かつての教え子・村中信夫が訪れます。が、思いもかけぬ事態から、音は11歳も年下の信夫を婿にとることになりました。生計のほうは音にまかせきりの信夫は化石を掘るのに夢中です。そして信夫は明石海岸で旧石器時代のものと思われる人骨を発見したのです。世紀の大発見「明石原人」は、しかし学歴社会の壁にはばまれて、小学校卒の信夫の業績とは認 められません。挫けそうになる信夫を、音は叱咤激励しながら支えます。折しも滿洲事変、日中戦争から太平洋戦争への時代です。日本に旧石器時代があったという学説も、この国は神武天皇から始まったとする皇国史観に抵触します。しかも信夫の発見した人骨は、東京大空襲で焼失してしまいます……。

劇団民藝Webページより
舞台写真2


キャスト

千葉茂則 日色ともゑ 藤巻るも
直良信夫
(考古学者)

(その妻)
恵美子
(その娘)
千葉茂則 日色ともゑ 藤巻るも
南風洋子 高橋征郎 細川ひさよ
田近せき
(田近家の隠居)
謙三
(玉枝の夫)
玉枝
(せきの娘)
南風洋子 高橋征郎 細川ひさよ
中地美佐子 高野 大 伊藤孝雄
夏子
(せきの孫)
大谷史郎
(夏子の夫)
松富雄一
(東大助教授
考古学者)
中地美佐子 高野 大 伊藤孝雄
境 賢一 角谷栄次 竹内照夫
倉本
(民間研究者)
番場
(民間研究者)
冬木
(新聞記者)
境 賢一 角谷栄次 竹内照夫
仙北谷和子 箕浦康子 今泉 悠
弓川
(教師)
天野
(教師)
村木
(編集者)
仙北谷和子 箕浦康子 今泉 悠
齋藤尊史 大森民生 相葉早苗
相沢忠洋
(岩宿遺跡発見者)
田辺
(東大大学院生)
千代
(直良家の女中)
齋藤尊史 大森民生 相葉早苗
河村理恵子 北田浩之  
看護婦 カメラマン  
河村理恵子 北田浩之  

スタッフ

小幡欣治
演出 丹野郁弓
装置 松井るみ
照明 秤屋和久
衣裳 前田文子
音楽 武田弘一郎
効果 岩田直行
舞台監督 中島裕一郎

上演予定

 鳴門市文化会館

 9月9日(土) 夜6:30〜

 上演時間 約2時間45分(15分の休憩を含む)

 ※約250台の無料駐車場あり
  2006年4月より台数減    

 徳島市文化センター

9月7日(木) 夜6:30〜

9月8日(金) 昼1:30〜

9月8日(金) 夜6:30〜

 阿南市市民会館

9月10日(日) 夜6:30〜


E-mailでのお問い合わせは        鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
まで。