ミュージカル 壁の中の妖精

木山事務所公演

2007年6月28日(木)鳴門市民劇場例会

ものがたり あらすじ 作者より 制作より
キャスト スタッフ 上演予定  


「壁の中の妖精」ちらし
舞台写真1 −生きているってこんなに素晴らしい−
ロナルド・フレーザー著、長谷川四郎訳「壁に隠れて」(平凡社刊)による

 


ものがたり

生きている素晴らしさを

  アンダルシアの小さな村の床屋で素朴な社会主義者の夫は、スペイン戦争後の30年間(1939-69)、フランコ独裁政権による処刑をまぬがれるため、自宅の壁の中で隠れて過ごした。その彼を支え励まし続けた妻と娘の赤裸々な姿を描いている。激しい政治の季節の中で、勇気と楽天性をもって生き抜いた家族愛のものがたり。春風ひとみが、一人で語り、歌い、踊る、感動の2時間!

  衝撃的な史実の記録(フレーザー著「壁に隠れて」長谷川四郎訳)をもとに、福田善之が書下し演出した渾身の舞台は、一編の透明なメルヘンに昇華する…

数々の受賞に輝きながら

  「いま、生きていることを素晴らしいと感じさせるドラマが、どれほど創られているか」「一人芝居の名作のレパートリーの一つ」などの賛辞に包まれて、第28回紀伊國屋演劇賞・個人賞を福田善之と春風ひとみの二人がともに受賞し、話題を呼んだ。その他、数々の受賞に輝く珠玉の舞台。

  全国から多くの人たちのご要望をいただいて、'93年4月の初演から今回が9度目の公演を迎える。

公演ちらしより

あらすじ

(一幕)

舞台写真 1.娘・マリアの話

  自分が幼い頃−4〜5才の頃の記憶を語る。卵の行商に出掛けた母の留守の夜のこと、どこからか歌声が聞こえてきた。マリアは、その声に語りかけた。「あなたは妖精?」。妖精は、マリアに「十二月の物語」の歌を教える。

2.妻・フリアーナの話

  共和国とフランコ軍の戦争が、1939年に共和国側の敗北で終って、床屋で村長だった夫・マノーロも村へ帰ってきた。が、マノーロは、地主たちから憎まれているので、見つかったら殺される危険があった。白首をするというマノーロに、妻・フリアーナは反対した。マノーロは玄関脇の煉瓦でふさいだ隙間に隠れた。フリアーナの考えは正しく、マノーロの前の村長は逮捕され、銃殺された。フリアーナは、卵の行商を始める。自分の留守中、捜索隊に踏み込まれ夫が捕まるのではないかという不安の中で、妊娠し、マリアが生まれる。行商の他に、エスパルトという草を紐に編んだものを売ることを始める。政府に禁止されている闇商売である。警官に見つからないために、エスパルトを乾燥する裏庭のある家が必要となり、引越しすることになった。

3.娘・マリアの話

  「十二月の話」の続きを語る。シルエットで精霊たちの踊る姿が浮び上がる。

(二幕)

4.妻・フリアーナの語

  マノーロの戦友が訪ねてくる。スペイン戦争で共に戦った思い出を語る。そして、「ワルシャワ労働歌」を歌い始める。隠れ場所で戦友の話を聞くうち、耐え切れずに一緒に歌い出したマノーロに、フリアーナは胸の中で必死に「止めて!」と叫んだが、戦友がその歌声に気づいた。万事休す。その時ドアが開いて、娘のマリアの大きな歌声が飛び込んできて救われた。

舞台写真 5.娘・マリアの話

  妖精が父だとわかったマリアに、フリアーナは「このことが知れたら、父は殺され、私たちは牢屋に入れられる。」と繰り返し言い聞かせた。マリアが大きくなって、ボーイフレンドが訪ねてくるようになると、マノーロは焼き餅を焼いた。マリアがいきなりその若者に抱きつかれた時、ふいに彼の体が重くなり、床に倒れた。マノーロがこん棒を手に立っていたのだ。しばらくたって、筋向いのシルベストルと親しくなり、結婚した。結婚式の当日、祝福の踊りの輪の中から家の中に駆け戻り、ウェディング姿を隠れ部屋のマノーロに見せるのだった。

6.妻・フリアーナ、そして娘・マリアの語

  マノーロが隠れてから30年が過ぎた。大赦がおり、治安警備隊本部にその許可をもらうため、フリアーナと婿のシルベストルの肩にすがり、固い舗装道路をおぼっかなげに歩き出す。もう64才になっていた。風の強いある晩、マリアは娘を寝かしつけ外出し、戻ってくると、娘が「ワルシャワ労働歌」を歌っていた……。

公演パンフレットより
舞台写真2


作者より

母と、やがて母になる娘たちに
福田善之●劇作・演出

福田善之さん   O1年の夏、春風さんや企画・演出補の福原さんらとともにスペインヘ行って、この劇の素材となった事件の村、ミハスを訪れた。驚いたことに、事件の主人公マヌエル・コルテスが隠れ潜んだ家も、道も街並みも、想像よりずっと狭く、小さかった。−−こんな狭苦しいところで、と、改めて胸がふさがる思いだった。

  マヌエルとフリアーナ夫妻の一人娘マリアさんは、かつての英首相サッチャーを思わせる風貌の六十代で、美しい孫娘たちとともに私達の前に現れた。福原さんのリードで和やかに会話が進むうちに、私はあることに気づきはじめていた。

  私はスペインを書いたつもりだった。違っていたらしい。どうやら私は意識せずに、フリァーナの中に自分の母を、マリアの中に姉を、見ていたもののようだ。私が書いたのは、結局日本だった。どうも、そういうものらしい。

  春風ひとみさんのこの作に対する情熱と、近年の進境はいちじるしい。スタッフの努力と相まって、上演記録が伸びて行くのはまことに嬉しい。

  それにつけても、作・演出者としての私の願いは変わらない。エピローグでマリアの娘に花束を捧げたかった思いは、変わることがない。私はこの舞台を、母たちと、やがて母となるだろう娘たちに、ことのほか見てもらいたいのである。

公演ちらしより
舞台写真2


制作より

四国市民劇場会員のみなさま
木山事務所  木山 潔

  四国市民劇場の例会に選ばれて、感動です!

  思えば、93年新宿の小さな酒場での、福田善之(作・演出)と福原圭一(企画・演出補)両氏との酔余の雑談がそもそもの始まり。こんなにも長く、広く、深くお客様に支持されて、そのうえ数々の賞をいただいて、これはほとんど「事件」のようなものかもしれません。

  これも、例会に選んでくださった全国の演鐙連の英断のおかげです。各地から寄せられた感想文は「燃ゆるがごとく熱く、抱きしめるがごとく愛にあふれて」、我々を有頂天にさせてくれました。

  今回の9度目の公演を終えると計292ステージを数えます。春風ひとみは、初演時の宝塚退団から間もない純情な乙女から、いまや艶と風格のある女優になりました。スタッフやミュージシャンも年を重ねて、それなりにカッコイイです(?)

  いざ!四国路へ、溢れる夏の太陽を浴びながら……。

公演ちらしより
舞台写真2


キャスト

春風ひとみ
春風ひとみ
 
演奏
伊藤弘一 細井 智
伊藤弘一
(ピアノ)
細井 智
(ギター)

スタッフ

作・演出  福田善之
作曲  上田 亨
振付 上島雪夫 美術 石井みつる 照明 日高勝彦
音響 小山田昭 衣裳 料治真弓 ヘアメイク 森川智未
影絵 堀 直昭 舞台監督 大山慎一 企画・演出補 福原圭一
制作 木山 潔・松本美文

上演予定

 鳴門市文化会館

 6月28日(木) 夜6:30〜

 上演時間 約2時間20分(15分の休憩を含む)

 ※約250台の無料駐車場あり
  2006年4月より台数減    

 郷土文化会館

6月30日(土) 夜6:30〜

7月 1日(日) 昼1:30〜

7月 2日(月) 昼1:30〜

 阿南市市民会館

6月29日(金) 夜6:30〜


E-mailでのお問い合わせは        鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
まで。