ものがたり | あらすじ | 作者より | 制作より |
キャスト | スタッフ | 上演予定 |
ものがたり
生きている素晴らしさをアンダルシアの小さな村の床屋で素朴な社会主義者の夫は、スペイン戦争後の30年間(1939-69)、フランコ独裁政権による処刑をまぬがれるため、自宅の壁の中で隠れて過ごした。その彼を支え励まし続けた妻と娘の赤裸々な姿を描いている。激しい政治の季節の中で、勇気と楽天性をもって生き抜いた家族愛のものがたり。春風ひとみが、一人で語り、歌い、踊る、感動の2時間!
衝撃的な史実の記録(フレーザー著「壁に隠れて」長谷川四郎訳)をもとに、福田善之が書下し演出した渾身の舞台は、一編の透明なメルヘンに昇華する…
数々の受賞に輝きながら
「いま、生きていることを素晴らしいと感じさせるドラマが、どれほど創られているか」「一人芝居の名作のレパートリーの一つ」などの賛辞に包まれて、第28回紀伊國屋演劇賞・個人賞を福田善之と春風ひとみの二人がともに受賞し、話題を呼んだ。その他、数々の受賞に輝く珠玉の舞台。
全国から多くの人たちのご要望をいただいて、'93年4月の初演から今回が9度目の公演を迎える。
公演ちらしより
あらすじ
(一幕)
1.娘・マリアの話
自分が幼い頃−4〜5才の頃の記憶を語る。卵の行商に出掛けた母の留守の夜のこと、どこからか歌声が聞こえてきた。マリアは、その声に語りかけた。「あなたは妖精?」。妖精は、マリアに「十二月の物語」の歌を教える。
2.妻・フリアーナの話
共和国とフランコ軍の戦争が、1939年に共和国側の敗北で終って、床屋で村長だった夫・マノーロも村へ帰ってきた。が、マノーロは、地主たちから憎まれているので、見つかったら殺される危険があった。白首をするというマノーロに、妻・フリアーナは反対した。マノーロは玄関脇の煉瓦でふさいだ隙間に隠れた。フリアーナの考えは正しく、マノーロの前の村長は逮捕され、銃殺された。フリアーナは、卵の行商を始める。自分の留守中、捜索隊に踏み込まれ夫が捕まるのではないかという不安の中で、妊娠し、マリアが生まれる。行商の他に、エスパルトという草を紐に編んだものを売ることを始める。政府に禁止されている闇商売である。警官に見つからないために、エスパルトを乾燥する裏庭のある家が必要となり、引越しすることになった。
3.娘・マリアの話
「十二月の話」の続きを語る。シルエットで精霊たちの踊る姿が浮び上がる。
(二幕)
4.妻・フリアーナの語
マノーロの戦友が訪ねてくる。スペイン戦争で共に戦った思い出を語る。そして、「ワルシャワ労働歌」を歌い始める。隠れ場所で戦友の話を聞くうち、耐え切れずに一緒に歌い出したマノーロに、フリアーナは胸の中で必死に「止めて!」と叫んだが、戦友がその歌声に気づいた。万事休す。その時ドアが開いて、娘のマリアの大きな歌声が飛び込んできて救われた。
5.娘・マリアの話
妖精が父だとわかったマリアに、フリアーナは「このことが知れたら、父は殺され、私たちは牢屋に入れられる。」と繰り返し言い聞かせた。マリアが大きくなって、ボーイフレンドが訪ねてくるようになると、マノーロは焼き餅を焼いた。マリアがいきなりその若者に抱きつかれた時、ふいに彼の体が重くなり、床に倒れた。マノーロがこん棒を手に立っていたのだ。しばらくたって、筋向いのシルベストルと親しくなり、結婚した。結婚式の当日、祝福の踊りの輪の中から家の中に駆け戻り、ウェディング姿を隠れ部屋のマノーロに見せるのだった。
6.妻・フリアーナ、そして娘・マリアの語
マノーロが隠れてから30年が過ぎた。大赦がおり、治安警備隊本部にその許可をもらうため、フリアーナと婿のシルベストルの肩にすがり、固い舗装道路をおぼっかなげに歩き出す。もう64才になっていた。風の強いある晩、マリアは娘を寝かしつけ外出し、戻ってくると、娘が「ワルシャワ労働歌」を歌っていた……。
公演パンフレットより
作者より
母と、やがて母になる娘たちに福田善之●劇作・演出O1年の夏、春風さんや企画・演出補の福原さんらとともにスペインヘ行って、この劇の素材となった事件の村、ミハスを訪れた。驚いたことに、事件の主人公マヌエル・コルテスが隠れ潜んだ家も、道も街並みも、想像よりずっと狭く、小さかった。−−こんな狭苦しいところで、と、改めて胸がふさがる思いだった。
マヌエルとフリアーナ夫妻の一人娘マリアさんは、かつての英首相サッチャーを思わせる風貌の六十代で、美しい孫娘たちとともに私達の前に現れた。福原さんのリードで和やかに会話が進むうちに、私はあることに気づきはじめていた。
私はスペインを書いたつもりだった。違っていたらしい。どうやら私は意識せずに、フリァーナの中に自分の母を、マリアの中に姉を、見ていたもののようだ。私が書いたのは、結局日本だった。どうも、そういうものらしい。
春風ひとみさんのこの作に対する情熱と、近年の進境はいちじるしい。スタッフの努力と相まって、上演記録が伸びて行くのはまことに嬉しい。
それにつけても、作・演出者としての私の願いは変わらない。エピローグでマリアの娘に花束を捧げたかった思いは、変わることがない。私はこの舞台を、母たちと、やがて母となるだろう娘たちに、ことのほか見てもらいたいのである。
公演ちらしより
制作より
四国市民劇場会員のみなさま木山事務所 木山 潔四国市民劇場の例会に選ばれて、感動です!
思えば、93年新宿の小さな酒場での、福田善之(作・演出)と福原圭一(企画・演出補)両氏との酔余の雑談がそもそもの始まり。こんなにも長く、広く、深くお客様に支持されて、そのうえ数々の賞をいただいて、これはほとんど「事件」のようなものかもしれません。
これも、例会に選んでくださった全国の演鐙連の英断のおかげです。各地から寄せられた感想文は「燃ゆるがごとく熱く、抱きしめるがごとく愛にあふれて」、我々を有頂天にさせてくれました。
今回の9度目の公演を終えると計292ステージを数えます。春風ひとみは、初演時の宝塚退団から間もない純情な乙女から、いまや艶と風格のある女優になりました。スタッフやミュージシャンも年を重ねて、それなりにカッコイイです(?)
いざ!四国路へ、溢れる夏の太陽を浴びながら……。
公演ちらしより
春風ひとみ | |
演奏 | |
伊藤弘一 (ピアノ) |
細井 智 (ギター) |
作・演出 福田善之 |
作曲 上田 亨 |
振付 上島雪夫 | 美術 石井みつる | 照明 日高勝彦 |
音響 小山田昭 | 衣裳 料治真弓 | ヘアメイク 森川智未 |
影絵 堀 直昭 | 舞台監督 大山慎一 | 企画・演出補 福原圭一 |
制作 木山 潔・松本美文 |
鳴門市文化会館 6月28日(木) 夜6:30〜
上演時間 約2時間20分(15分の休憩を含む)
※約250台の無料駐車場あり |
郷土文化会館 6月30日(土) 夜6:30〜 7月 1日(日) 昼1:30〜 7月 2日(月) 昼1:30〜 |
阿南市市民会館 6月29日(金) 夜6:30〜 |
E-mailでのお問い合わせは 鳴門市民劇場ホームページ nrt-geki@mc.pikara.ne.jp まで。