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田村勝彦さんに演劇直前インタビュー

楽屋訪問37

文学座公演「ゆれる車の音 〜九州テキ屋旅日記〜」鳴門例会(2009年11月7日)で“有江孝文(警官)”役をされる田村勝彦さんを公演前に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

田村勝彦さん
鳴門市民劇場(以下鳴門と略)
文学座様には『赤い月』『缶詰』『華岡青州の妻』『華々しき一族』と4つの例会で鳴門にお越しいただいております。最後に田村さんがお越になられたのは『缶詰』でしたね。
田村(敬称略)
そうですね。4年ぶりになりますね。
鳴門
早速ですが、作品の見どころについてお聞かせください。
田村
『ゆれる車の音』は終戦後のテキ屋のお話です。終戦後の混乱期に愚連隊にショバを追われた金丸一家が、20年ぶりに油津に帰って来るところから話は始まります。この作品の中には、男と男の関係、男と女の関係、親子の関係、夫婦の関係など様々な人間関係が散りばめられております。だからこそ、我々が育ったグループサウンズの時代をご存じの方には懐かしく感じられたり、若い方には人情喜劇として笑ってもらい最後にはおじさん達の友情にほろりとしたり、ご覧になられている方の世代や境遇により、何に共感をお持ちになられるかが変わってくる芝居だと思います。今より昔の方が貧乏でお金もありませんが、人と人とが熱くぶつかり合いながら一生懸命生き抜いていて、そこから友情などのいろんな人間関係が芽生える時代だったと思います。人と人との関係が希薄になっている時代だからこそ、この芝居をたくさんの人に観ていただきたいですね。かつては普段の生活の中で培われていた深い絆や、そこから生まれる様々な関係のすばらしさを思い起こしてもらえる舞台になっています。
鳴門
その時代を生きてきた会員も多いですから、懐かしく感じられる方も多いと思います。
田村
そうですか。それは楽しみです。
鳴門
実は、去年大阪で観させていただいたのですが、懐かしい思いがしてとても印象に残っています。『ゆれる車の音』は4年前に来られた『缶詰』と鳴門では例会になっていませんが『踏台』に続く3部作と聞いております。『缶詰』と『踏台』は登場人物の設定が同じ点で繋がりがありますが、『ゆれる車の音』は設定からして違いますよね。3部作と言われる所以は何でしょうか?
田村
作家も『缶詰』と『踏台』は水谷龍二さんでしたが、『ゆれる車の音』は中島淳彦さんに書いてもらっています。作家からして違うんですね。実はこの企画自体は角野から出た企画です。当初は、人情喜劇のようなものであまり難しくないものがいいなと、いうことで『缶詰』と『踏台』が出来上がったんです。『おじさんシリーズ』とでもいいましょうか(笑)。3回目を作成するにあたり何かしら角野に考えがあり、丁度そのころ中島淳彦さんと角野が親しくしておりまして、中島さんにお願いしたとう経緯があります。水谷さんの設定はある会社に同期入社した男3人が織り成す友情物語でした。『ゆれる車の音』は登場人物こそは違いますが、青春を共にしたおじさん達の友情物語という点で、同じテーマを持った作品なのです。また、現実世界でも角野・たかお・鵜澤・田村は文学座で若いころ杉村さんに怒られながら激しい芝居をしていた仲間でもあり、今回の芝居に通じるものがあるんです。そこを、今回の愚連隊に中島さんがうまく置き換えて書いてくれた芝居でもあるんです。
鳴門
同期入社とは違いますが、若いころ青春を共にした『おじさん繋がり』ということなのですね。そういえば、アトリエ公演などでも皆さんはよく共演されていますよね。私としては、別役さんのイメージがあるので『缶詰』を観た時は、こんな人情芝居もするんだと驚いた記憶があります。
田村
よく角野は、別役さんの芝居から教わったものが今の芝居のベースになっていると言っていますので、あの頃に教わったものは今でも大事にしているんでしょうね。そういう意味では、今回のおじさん4人は若いころに別役さんと芝居をしてきていますので、おもしろい瞬間といのに大きな違いはないように感じますね。
鳴門
今回の芝居では、真ん中に大きな車がドンとあって、ある意味影の主役ともいえる存在でインパクトがありますね。丁度、私の父がスバル360に乗っていましたので、その時代のお芝居になっているんでしょうね。今回、本物の車『ホンダ・ライフ・ステップバン360』を登場させたこだわりを教えて下さい。
田村
やはり、演出家はかなりこだわったと思います。まず『ゆれる車の音』というタイトルがタイトルですし、旅から旅へ商売をしているテキ屋のイメージもあります。作り物ではリアリティに欠けますからね。
鳴門
作り物の車が登場する芝居はよくあるのですが、なかなか本物の車が登場する舞台はないですよね。少なくとも私は本物の車が登場する舞台は今まで観たことがありません。よくあの時代の車が手に入りましたね。
田村
ええ。こだわりがあるからこそ、その時代の『本物』を探しました。中古車屋さんを探しに探し、やっと見つけたのがあの車です。角野が車の中に逃げ込んだり、車の影に隠れ様子を窺ったり、車の開け閉めの音、車がゆれる場面など、今回の芝居は本物の車でないと説得力がないですよね。
鳴門
田村さんはテキ屋あがりの警官役をされておりますが、実は私の父が警官なんですね。もちろん、うちの父は『有江』とは違い真面目な警官だったのですが(笑)。警官つながりで田村さんの役作りについて興味があるので、そこのところをお聞かせ下さい。
田村
普通の警官は真面目ですよね(笑)。実際、芝居の中で喧嘩と煽っておいて逃げてしまうとか、お金を借りていても返さないというセリフがでてきます。『有江』はその通りの不真面目な警官ですね。私自身は小さいころから喧嘩ってのが好きじゃなかったもので、気軽に喧嘩して、その後はケロっとしている人が羨ましかったですね。なので、自分の中にないものを作りあげることには苦労しましたね。
鳴門
田村さんの好きな場面などがあればお聞かせください。
田村
たくさんのエピソードが散りばめられている芝居なので、ひとつをあげるのは非常に難しいですね。あえて言うなら『油津タイガース』の場面でしょうか。皆がひとつになって楽しく余興をしているあの場面です。私自身も楽しく演じています。
鳴門
では続いて、田村さんについてお伺いします。プロフィールを見せてもらったのですが文学座の養成所に入られたのが25歳頃ですね。お芝居を志されるにしては遅いスタートのように思うのですが、この世界に入られたきっかけをお聞かせ下さい。
田村
私は学生時代に演劇をしていたとか、観劇をみて感動したという経験も全くなかったんです。年に1度くらい学校に回ってくる演劇を観たくらいでした。そして、演劇に関わることもなく、高校卒業してすぐ東京の会社に就職しました。ただ、営業の仕事をしながら本当にこれでよかったのかなとずっと考えていたんですね。そうこうしていると、たまたま営業中に演劇学校の看板が目に飛び込んできたんです。仕事が終わった後、週3回くらいなら通えるかなという程度の気持ちで始めたのがきっかけとなって、こんな風になっちゃったんです(笑)。
鳴門
その学校が、文学座の研究生だったんですか?
田村
いえ、それとは違います。文学座の研究生はその後になります。その頃の研究生の応募者は1,000人以上いたんですよ。募集人員が40名くらいだったので演劇の東大と言われるくらい狭き門でした。
鳴門
そこを合格されたなんて才能があったんですね。
田村
いやいや、倍率だけがすごかったんですよ。受かったのは優秀とかではなく、運がよかっただけだと思います。
鳴門
どんな、試験だったんですか?
田村
最初は筆記試験があって、その後実技試験があり、実技も1次試験と2次試験がありました。経験者の方が多かったので、どうして私が残ってしまったのかが不思議でしたね。(笑)。
鳴門
田村さんのすごく耳心地よい素敵なお声は、持ち前のものなんですか?
田村
ありがとうございます。特に何をしたって訳ではないですね。文学座に入った頃は先ほども申しあげましたように怒鳴る芝居をしておりましたから、何も分からないまま芝居に打ち込み、大声をだして声を潰しながら芝居を創っている内に、知らず知らずの間に声帯が鍛えられていたように思います。
鳴門
普段から、声のお手入れとかはされていないんですか?
田村
何もしていないですね。ただ、乾燥している時期には部屋に洗濯物を干してみたり、加湿器を入れてもらう程度のことはしています。
鳴門
お話は尽きませんが時間となりましたので、最後に私たちのような演劇鑑賞会の活動について、考えられていることがあればお聞かせください。また、鳴門市民劇場の会員に一言メッセージをお願いいたします。
田村
この芝居が3作目となり、いろいろ各地を回らせていただいて初めてわかったんですが、会員の皆様は、お友達にお声掛けをして下さったり、サークル集会を開かれて例会の準備をされたり、昨日は鳴門駅にお出迎えに来て下さったり、例会が始まる前に一生懸命に活動をされているんですよね。だからこそ、私達はただ呼ばれて芝居をするだけではなく、芝居以外にも市民劇場の皆さんと協力し、演劇鑑賞会を盛り上げていかなければならないと考えるようになりました。今日は芝居の後に交流会をもっていただけると聞いて楽しみにしておりますが、このような交流会などを通して多くの方と触れ合う機会を持つことにより、お芝居以外の楽しみもお届けできたらいいなと考えております。そしてそれが、次の例会への楽しみに繋がっていけばいいなと思います。いつも2ヶ月以上もかけて例会の為に頑張っていただいて本当にありがとうございます。これから寒い季節になりますが、どうかお体にお気をつけください。私達も皆さんのご期待に応えられるよう、よい芝居を創っていきたいと思います。
田村勝彦さんとインタビューア

E-mailでのお問い合わせは              鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
まで。