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加藤義宗さんに開演直前インタビュー

楽屋訪問60

  加藤健一事務所「モリー先生との火曜日」鳴門例会(2013年9月14日)で“ミッチ”役をされる加藤義宗さんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

加藤義宗
鳴門市民劇場(以下鳴門と略)
今日が千秋楽だとか?
加藤義宗(敬称略 以下義宗と略)
ええ、そうです。
鳴門
もうどれくらい上演されているんですか?
義宗
今回が初再演で、今日のステージで87回目です。
鳴門
本当に今日で終わってしまうんですか?
義宗
本当に今日で終わりです。
鳴門
そうなんですね。87回のステージお疲れ様でした。
義宗
いや、いや、まだ終わってないですけどね(笑)。
鳴門
確かに(笑)。千秋楽に挑む今のお気持ちは?
義宗
どんな芝居もそうなんですが、僕はひとつ前のステージの方が千秋楽のような気持がするんです。今日はセリフをひとつひとつ言うたびに終わっていくみたいな気分がして、芝居全体としての終わり感は、昨日の方がすごく感じますね。
鳴門
では、今日は鳴門に全てのセリフを置いて帰るつもりで挑んでください(笑)。
義宗
はい、全てを鳴門に置いて帰ります(笑)。
鳴門
『モリー先生との火曜日』は人生を示唆する言葉が溢れ、人間の生き方を問うている舞台ですよね。
義宗
モリー先生の言っていることは哲学的なんですが、先生自身は社会学者なんですね。社会学者だからこそ哲学みたいに難しい言葉ではなくて、すーと耳に入ってくるような私達に身近な言葉で教えてくださる方だったので、演じていてもなるほどと思うことがいっぱいあります。
鳴門
モリー先生の言葉で、今ぱっと思いつく言葉はありますか?
義宗
「相手が100%悪くて自分が100%正しくても、相手の事を許しなさい。そうすれば人と争う事は無くなる」という言葉です。僕はその言葉を聞いて10%くらい相手を許せるようになりました。それは僕にとってかなりな進歩ですね(笑)。
鳴門
今「許し」という言葉が出てきましたが、モリー先生の講義のテーマは他にも「死」「恐れ」「老い」「欲望」「結婚」「家族」「社会」「人生の意味」こんなにも多岐に渡るテーマをひとつの舞台で論ずるのはかなり難しいのでは?
義宗
ええ、講義の議題はすごくいっぱいありますよね。モリー先生じゃない人がそれだけ多くの ことについて語ると学校の難しい授業のようになってしまい、誰も聞かなくなるでしょうね。モリー先生は非常に話が上手い方なんです。難しいことを話しているのにも関わらず、皆を惹きつけてしまう方なんです。それをそのまま本にしているので、ユーモアや笑いがいっぱい詰まっているのです。身近なところでいえば瀬戸内寂聴さんの講話のようなものですね。お話自体が非常におもしろいんです。
鳴門
では、加藤健一さんがモリー先生をおもしろく演じられているのではなく、モリー先生がおもしろい方だったんですね。
義宗
ええ、モリー先生ご自身がとてもおもしろい方だったんです。なので、おもしろい方をおもしろく演じる加藤健一はすごく難しかったでしょうね(笑)。
鳴門
この作品はノンフィクションですよね?義宗さんは、モリー先生のお話を聞かれたことはありますか?
義宗
ええ、生ではないですが、Youtubeで流れているので。雰囲気からして楽しそうだというのが伝わってきますね。
鳴門
舞台では義宗さんの生演奏がありますね。
義宗
はい。先生はダンスが好きで、ミッチは若い頃シャズピアニストを目指していました。音楽は先生とミッチの心の結びつきを表わすのに重要な役割を果たしています。
鳴門
ミッチの講義は、モリー先生の亡くなる直前のものですか?
義宗
そうですね。ミッチが先生を訪ねるようになったのはALSを先生が発症してからです。この物語はほんの6ケ月ぐらいの講義録なんです。ALSは人によって進行速度が随分違うらしく、発症しても何十年も生きている方もいれば、モリー先生のように8ヶ月で亡くなられる方もいらっしゃるようです。
鳴門
舞台で気を付けていることはありますか?
義宗
特に今回はふたり芝居なんで、どうしてもやり過ぎちゃうんですよ(笑)。ついつい表現過多になって、自分が前へ前への精神が出てしまって、そこを全部演出家に削ってもらって(笑)。メインストーリーはモリー先生の講義なので、観終わった後にお客様の記憶にモリー先生のいい言葉がたくさん残るよう、先生を立て続けることが、一番気を使いました。僕はあくまで紹介者であり、常にお客様の目線であることを心がけました。
鳴門
好きな場面はどこですか?
義宗
好きな場面はいっぱいあります。でも、やっぱり最後の亡くなる場面が一番好きですね。初演の時、僕はスタッフとして付いていたんですが、その時も最後の場面には非常に感動したのを憶えています。
鳴門
初演のミッチと再演のミッチ、役者が変わり演じる上で意識したところは?
義宗
演出も加藤健一も再演で、僕だけが初演なんです。ただ、初演を観ているので、それをベースにして演じようとしたのですが、初演の方と僕とのキャラクターが違うので結局はゼロベースで創りあげていくことになりました。遥か彼方にいる演出と加藤健一に追い付くのに、ただただ必死でしたね。
鳴門
ストーリーは初演と同じですか?
義宗
同じです。セリフも同じです。でも役者が違うと全然違う芝居に感じるようですね。
鳴門
難しいかったことはありますか?
義宗
そうですね。モリー先生が車いすに座ってしまうと、そこから彼は動かないんですよね。なのでモリー先生の周りを僕だけが動きまわらなくてはならなんですよ。普通の芝居だと、斜に構えていても対面して話しているように見えるのですが、この芝居は斜に構えると先生の話を聞いていないように見えちゃうんです。ですので、モリー先生と対峙するときは、完全にお客様に背を向けてしまう形になるんです。普通の芝居はお客様へ背を向けることはないですからね。
鳴門
会場に背を向けて話すと声が届きにくいのでは?
義宗
ええ、なので今回は反響板を持って来ているんです。舞台の後ろに4Mくらいの黒い壁を作っているんです。初演の時は後ろに幕を張っていたんですが、声が幕に吸収されてしまい、モリー先生が声を張らないと後ろまで届かなくなり、劇評に「亡くなる寸前にあんな大きい声は不自然だ」って意見が(笑)。今回は小さな声でもちゃんと皆さんに届くようにあの装置を持ってきました。
鳴門
加藤健一さんは、鳴門の会場では声を届けることについて特に気を使って下さっていますね。ところで、義宗さんがこの道に入られたきっかけは、やはりお父様の影響でしょうか?
義宗
そうですね。父が役者でなければ僕は役者はやってなかったと思います。
鳴門
では小さい頃からお芝居の世界に?
義宗
芝居は3歳ごろから観ていましたね。でも初めて舞台に立ったのは16歳の頃です。
鳴門
意外に遅いですね。
義宗
ええ、観るのは好きなんですが、舞台に立ちたいとは思わなかったですね。16歳に舞台に立った時は、ものすごく怖くてやっぱり向いてないなって(笑)。芝居よりも音楽が好きだったので、ずっと音楽ばかりしていました。それでも、父が人生の選択肢から芝居を外さない為に、ときどき声をかけてくれ舞台に立つことはありました。でも、同じ道に入ることにはすごく抵抗感がありました。だって、芝居をするとどうしても「加藤健一」って冠がつき、必ず比較されるので、あんまりいいことがないですからね。大人になり、それが受け入れられるようになってきたら芝居がだんだん楽しくなってきました。今はもう芝居しかしていないですね。
鳴門
お休みの日は何をして過ごされていますか?
義宗
僕は無趣味なので、家に飼っている犬とウサギを可愛がっています。もう、ウサギは10歳、犬は15歳です。まだまだ元気なので、もうちょっと長生きしてほしいなと思います。
鳴門
ウサギをペットとして飼うってどんな感じなんですか? お手とかするんですか?
義宗
いや、しないです。全然しないです(笑)。ウサギの気分が良ければ呼んだら来るぐらいで。基本的に集団生活する動物ではないので、ひとりでいたい動物なんですよ。なのであんまり積極的に関わってこないですね。
鳴門
そうなんですか?昔流行ったドラマでは、ウサギは寂しいと死んでしまうっていわれていませんでした?
義宗
違うんですよ。寂しくても死なないんですよ、ウサギは。自分の小屋に他の者が入ってくる事をとても嫌がるので、一緒にゲージに入れると喧嘩しちゃうんですよ。
鳴門
ご一緒に散歩するんですか?
義宗
うちのは、首輪を嫌うので散歩はしないです。
鳴門
ところで、これからどんな作品に挑戦したいですか?
義宗
僕は舞台が好きなので、これからも出来るだけ舞台に関わっていきたいですね。役としては難しいと思うものにチャレンジしたいです。自分とパターンの違う方とぶつかってみたいですね。
鳴門
ご自身と違うパターンとは、例えばどんな?
義宗
加藤健一がやっているのは、いわゆる新劇ですよね。そうじゃなくて全然違う畑の方達と共演してみたいですね。
鳴門
義宗さんならそういうお誘いもありそうですけど?
義宗
ええ、この間一回やらせていただいて非常におもしろかったので、もっとやってきたいですね。もちろん新劇は新劇でおもしろいので、その部分はしっかりやりつついろんな事にもチャレンジしたいですね。
鳴門
今後も加藤健一さんと共演される予定ですか?
義宗
ええ、もちろん。これが終わった後にもあります。
鳴門
どのようなお芝居ですか?
義宗
コメディで、ミュージカルで活躍されている阿知波悟美さんと、加藤健一、高畑淳子さんの娘さんの高畑こと美さんが出演しています。ストーリーなど、詳しくは加藤健一事務所のホームページをご覧ください。
鳴門
おもしろそうな舞台ですね。最後に鳴門の市民劇場の会員へ一言お願いします。
義宗
僕たちがちゃんとした舞台をやろうと思ったら、大手の舞台にでるか、鑑賞会の舞台に出るか2パターンしかないんです。鑑賞会があるおかげで、加藤健一事務所もいい作品があったら、こうやって観て貰える機会を得ることができるんです。舞台役者にとってそれは本当にありがたいことです。演劇鑑賞会の組織には感謝しています。ですので、もし自分の出来ることがあればおっしゃっていただければ、なんでもやろうと思っています。そうやってお互いが一緒になって盛り上げていきたいと思います。
加藤義宗さんとインタビューア

E-mailでのお問い合わせは              鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
まで。