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松金よね子さんに開演直前インタビュー

楽屋訪問63

  グループ る・ばる「片づけたい女たち」鳴門例会(2014年3月27日)で“おチョビ”役をされる松金よね子さんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

鳴門市民劇場(以下鳴門と略)
グループ名の「る・ばる」とはどういう意味ですか? 松金よね子
松金よね子(敬称略 以下松金と略)
フランス語で「le」は冠詞で「bal」は舞踏会という意味です。「ル・バル(1984)」というすごく面白い映画があって、観て感動したんです。パリの下町のダンスホールが舞台で、セリフはいっさいなく、唄と踊りだけで戦前から現代までの時代の流れと、そこに生きる人々の生活や喜怒哀楽を見事に表現しています。元々は舞台劇なんですけど、映画にはその劇団の役者さんが出ていたようで、皆さん結構年配で…でもとても素敵で、ああいう芝居演りたいね、といってつけた名前なんです。
鳴門
作品のことについて伺います。特に60歳、70歳代の人たちには身近な話だと思うですが・・・。
松金
私が演じる「おチョビ」は、高校を卒業して結婚して食堂のおかみさんになって、嫁がいて孫もいるけれどもやっぱり不満がある。母親の介護のあと、ホッとできると思いきや、忙しくなっていくばかりで、今や嫁や息子に文句も言えず我慢を重ねる毎日。そんなどこにでもいそうな人です。田岡が演じる「バツミ」は美貌を武器に年上の男と結婚し、お金と美貌だけで生きてきたみたいな自立できない女で、そんな自分を情けなく感じてもいる。そして、岡本が演じている「ツンコ」ですけど、三人の中では一番自立しているように見える女。キャリアウーマンですが、会社では言いたいことも言えず、上司には逆らえず、これでいいのかと思っている。お客様はこの三人の女たちに自分の姿を当てはめて、あ〜私みたいだと感じながら観てくださいますけど、どこにでもいるそんな三人の女たちの片づけられない人生を描いた芝居なんです。この芝居で永井さんが言いたかったことに「傍観者の罪」というのがあって、それがこの芝居の大きなテーマになっています。私たちは3.11のあと、絆とか言っていても時がたてば自分の生活に追われ、被災地のことを忘れていってしまう。ウクライナの問題も原発の問題も、私たちが考えてもどうしようもない、私たちには何も出来ないとただ傍観しているだけになっていく。それが今の日本社会の状況になってきて、政治家が悪いと文句を言っているのですが選んだのは私たちで、はたしてこれでいいのだろうかと、そんなことを感じる芝居になっていると思います。
鳴門
私たちの年代が感じる虚しさとともに、今までの生き方の反映ともいえるではないですか?
松金
それも勿論あると思います。若い人は若い人なりにいろんな問題をかかえています。学校の中でも先生にものを言えない保護者とか、お父さんに逆らえない子もいるだろうし。年代は別にして、特に男性の方にも観ていただきたいですね。ただのおばさんのおしゃべりっていうんじゃなくて、今言ったようなところを観て頂けたら嬉しいです。
鳴門
身の回りの出来事から深く掘り下げていくのは見事なものですね。
松金
小さいことが、やっぱり大きなことに繋がっていくんだということですね。近所にごみをためた人ってよくいるじゃないですか。ごみ屋敷とかいわれて、それが社会問題にもなっている。小さい問題が、すごく大きな社会の問題になって、それが世界の問題にまでなっていくのに結構気がつかないでいるかもしれない。部屋も人生も社会も片づけていかないといけないですけど、なかなか片づかないんですね。
鳴門
でも、現実ではなかなかそこまで拡大して考えないですね。
松金
そうなんです。自分のことでもう一杯一杯なので。
鳴門
ところで、演じるにあたって難しいところや楽しいところなどありましたか?
松金
演じるのはいつも難しくって…(笑)。簡単にできたらお稽古いらないですけれどね。でも舞台は映像と違って、今をともに生きるというか、今を感じあうというか、それがすごく良いんで。また東京だけでなく、こうやって遠くの方たちに観て頂けるのが本当にうれしいことです。3.11のあと、もう私たちも演劇なんかやっても意味がないんじゃないかと思っていました。もっとやるべきことがあるんじゃないかと…。でも地震のあと東北で公演したんですけど「今、生きているという実感があります」と、演劇を観て言って下さった時、それがすごく嬉しかったのです。
このお芝居は観て頂くと分かるんですが、ものを片付けながら芝居が進んでいきます。違うごみを片付けてしまうと違う方に行ってしまうんです(笑)。セリフを忘れた俳優にセリフを教えるプロンプというのがあるんですけど、ごみのプロンプもあって、「はい、右前の本」とか言ってもらわないと(笑)分かんなくて、次は「缶」とかね。もう片付けるのが、普通のお芝居の倍大変で、台詞を言うだけなら何と楽なのかと…(笑)、つくづくこのお芝居をやって思いました。大雑把な片付け方は決まっているんですけど、ごみが散乱しているものを最後までにきれいにしなきゃならない。それが毎回違うものですからライブで、片付けながら芝居を続けるのは他の芝居よりかなり大変だなあと思います。
鳴門
是非ここは観て欲しいと思う場面はどこですか。
松金
それは全篇ですね(笑)。私たち3人の唯一の武器は、もう20歳代の頃から一緒にやっていますので、長い間の友情とか友達の空気感は、絶対他の人には真似できないことです。これだけは、永井さんも褒めてくれて、どんな上手な役者さん三人が他所から集まってもこの空気感は出ないだろうと言ってくださった。そんな私たちのアンサンブルを観てください。
鳴門
ところで舞台、ドラマ、映画などで活躍されてますが、出演される作品によって演じ方等が違うんでしょうか?
松金
舞台は止まらないので、絶対失敗をどうにかクリアーしなければいけません。映像はNGがききますから、もう一回やりましょうというのがありますね。ただしテレビの収録は、例えばシリーズ物で7話完結としたら頭から順に撮っていくとは限らないんです。例えば何さんのお家のシーンを撮って、違う家のシーンがあったら撮って、混ぜて撮ってしまいます。だから台本4冊ぐらい持って1話と2話と3話を撮ることがあります。そういう場合は気持ちをつなげるのにちょっと苦労することがありますね。
鳴門
演劇となったら充実感があるのではないでしょうか。
松金
お客様の目の前でやるので、まだ台詞を余り覚えてない時の初日の恐ろしさはねえ(笑)。有名な井上ひさしさんの作品の場合は、もう最後の方はお稽古してないものですから誰の番か分からないみたいな感じはありましたね。映画だったらここだけ、このシーンだけ覚えようとなるのだけれども、舞台の場合は全部覚えておかなきゃならないですから。
鳴門
アドリブを入れることはあるのですか?
松金
どんな芝居でも基本的に本番中のアドリブはありません。ただ、アクシデントが起きた場合は、アドリブでつなげていくことはありますけれど。
鳴門
この道に入られたきっかけは何だったんでしょうか?
松金
よく聞かれるんですけど、本当にやることがなかったんです(笑)。芝居好きのボーイフレンドが、テアトル・エコーで上演している井上ひさしさんの「日本人のヘソ」がお前にぴったりだと言うものだから観に行きまして、そしたら面白くて感動して、劇団の試験を受けたんです。運よく受かって、2〜3年やってみようかなと思っていたんですけど、これまた運よく役に恵まれて、続けてこられました。私は芝居より音楽が好きで、中学・高校時代はラジオで洋楽ばかり聴いていましたから、音楽の仕事がしたかったんです。自分の好きな曲を世の中に広めるディスクジョッキーの仕事にちょっと憧れた時代がありましたね。
鳴門
それにしてはすんなりなったものですね。
松金
井上ひさしさんの作品「表裏源内蛙合戦」でデビューしたのです。それが劇団のこけら落とし公演で、総出演だったんですね。井上さんが出演者の皆さんにあて書きしてくださいました。その時、変わった女優がいるとか言われて…。何で変わってたかというと、自分のことしか考えないで演っていたから。一つの役だけではなく沢山の役を演じる、そういう芝居だったので、いろんなシーンが出てきてだから楽しくて、とにかく好きなことやっていました。その頃は、先輩に好かれようとか、人に好かれるような芝居はしなかった。でも、あの捨て身だった時代は、もしかしたら輝いていたかもしれない。今は人に好かれようと思ってばかり(笑)。大事なものを捨てたかもしれないなあと思っています。
鳴門
松金さんの好きな言葉は何ですか。
松金
「感謝」というのをすごく感じますね。年とってから。いろんなことを有難いと思うことですね。綺麗ごとに聞こえたら恥ずかしいですけど、全部ですね。若い頃は努力とか忍耐とかを考えていました。結婚生活ひとつとっても努力と忍耐と思っていましたけど、今は感謝ですね、本当に。
鳴門
とてもお元気でいらっしゃいますけど、元気のもとは何なのでしょうか。
松金
元気のもとはねえ。そんな元気ではないけれど、元気な人を見ると元気になるんですね。こないだローリング・ストーンズというロックグループが来たんですけど、ミック・ジャガーをはじめ皆70代なんですけど無茶苦茶カッコいいんです。もう子供の頃からファンだったんです。
鳴門
歩くとか走るとかしているのですか。
松金
歩くのは好きです、散歩も好きですね。膝が悪くなったことがあって、それも全部筋力が衰えていると言われて、それ以来なるべく歩くようにしています。
鳴門
散歩はどこへ行かれるんですか。
松金
どこへでも行きますね。町歩きが好きですね。意味なく歩くのが好きです。
鳴門
買い物とかも好きなんですか。
松金
そうですね、好きです。旅に出ると、珍しいものとかご当地ものがあるんで楽しいですよね。でもこの芝居をやってからは、余り物を買わないようにしようと思っていますけど(笑)。
鳴門
最後に私たちのような演劇鑑賞会に対して、何かメッセージをいただけませんか。
松金
先ほどもお話ししたように、われわれにとってすごく励みになります。東京などに出向いていただかないと、芝居がなかなか観られない中で、こうやって遠くに呼んでもらって観ていただけるのは、本当に有難いことだと思います。皆さんに東京まできてもらうわけにはいかないので…、こうやって沢山の人に観ていただけるお陰で、演劇が小さなものにならずにすんでいます。東京だけでやっている劇団も一杯あるし、なにしろ数がものすごいんですね。小さい劇場が一杯あるんですけど、東京での公演だけというのは寂しいですよね。私たち三人が出会った東京乾電池という劇団はその頃、渋谷の、今はなくなってしまった100人しか入れない劇場で、初日と楽日だけのものだったけれど、2ヶ月近く稽古して2日公演ですからね。それが段々長くなり1週間とかになりましたけどね。                                   
鳴門
長時間ありがとうございました。                     以上
松金よね子さんとインタビューア

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nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
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