劇団青年座公演「横濱短篇ホテル」鳴門例会(2022年1月20日)で“奥山ハルコ”役をされる野々村のんさんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。
鳴門市民劇場(以下鳴門と略) オムニバス形式の芝居(この作品)の面白さとは
野々村のん(敬称略 以下野々村と略) 最初、監督とプロデューサー、そこに高校生の奥山ハルコが出てくるところからスタートするんですが、さあ、この後どうなるんでしょう!というところで違うシーンとなるんです。今度は、フミヨという親友が出て、そこにまた監督が出てくるんです。そこに新たな登場人物、杉浦さんという人が出てきて、さあ、この後どうなるんでしょう!で、次は関係ないかのような話が始まるんです。でも実は奥山ハルコの旦那さんという設定があるんです。少しずつ少しずつ登場人物が重なって出てくるんです。何か繋がりがある。さっき言っていたこれはこれかな、今言っているのが後でどうなるんだという、観ながら少しずつ繋がっていき、一番最後のシーンでそれが全部繋がっているという面白さがあると思います。
鳴門 様々な年齢の奥山ハルコを演じる難しさについて
野々村
1話の奥山ハルコは若い人がやっていて、4話になった時に15年経っていて、1話の結果がこうなったんだというところから始まって、その次が10年後、そして還暦を迎えたという年代に分かれているんですけど。
どちらかというと、奥山ハルコという人は、年齢がいったからどうこうというキャラクターではなくて、女優になった時からもう虚構の人というか、虚構の世界で生きているという部分があるので、あまり年齢がということは考えてないです。
鳴門 鳴門には2010年に赤シャツで来られていますが、鳴門の印象を教えてください
野々村 前回に来たときに朝6時からうどんを食べに行ったんですね。駅の近くの“たむら”に行ったんですよ。行ったら満席で、ものすごい活気で、その渦に巻き込まれながら、釜玉を食べました。次にとにかく鳴門に来たら食べようと思っていたら今回は宿泊先が違うんですよね。そのあとにこまつ座で来たときに、渦潮を見に行ったんですよ。実家が神戸で、両親は私が出ている舞台をここ鳴門に観にきたいと言っていたのですが、残念ながらこういう状況なので来られませんでした。鳴門は身近な感じがします。私も時々家族で旅行をしたりとか、泊ったりとかしてたんです。親戚のおじさんが四国巡礼をしていたので、鳴門もそうですけど、四国はすごく身近なイメージがあります。
鳴門 この世界を目指した、また青年座を選ばれた理由を教えてください。
野々村
凄いドラマチックな話はないんですけど。
私はサラリーマンだったんですね。それで自分たちで劇団を作って地元神戸でお芝居をしていたんです。仕事が忙しくなったりとかして、お芝居も稽古もできなくなって、仕事も楽しかったのですけど、何か次に進みたいなという感覚が急にわいてきました。会社の社長も「二足の草鞋はあきまへんで」って「どっちかにしなはれ」って言われたので、「じゃあ辞めます」って辞めたんです。
青年座を受けたのは、西田敏行さんのことが大好きだったので。試験があって研究所に入るんですが、その試験は歌ったり、ダンスをしたり。1年間は基礎訓練、2年目はお芝居を4本やって、どういう基準かわからないですけど、青年座に入りました。青年座に入れるとは私は思ってなかったです。
鳴門 特技に中国語とありますが、学ぶきっかけを教えてください。その他の趣味も教えてください。
野々村
最初、京劇の人と一緒にやるお芝居があったんですね。私は劇団に入って5年目くらいだったかな。色々大変で、できないことがいっぱいあって、すごく落ち込んでいたんですね。その時に京劇の人達に出会って、凄く面白かったんです。お芝居の関わり方も面白いし、普段の生き様みたいなこともとっても面白くて、新鮮だったんですね。通訳の人を通して「一度観に行かせてください」とお話をして、「ああいいよ」なんて名刺を貰ってすぐに北京へ行ったんですよね。「本当に来たのかよ」って言われましたけど、「この人に見せてあげてください」というメモを書いてくれて、これを持って行けばどこの劇場でも見れるから、これを持って観に行きなさいと言ってくれて、その地図だけを持って、バスや電車を乗り継いで、色んな劇場の演劇を見て回りました。その時に、どんどん面白い人たちだなって、人が面白かったんですね。それで、もっとコミュニケーションをとりたいなって思うようになって勉強したんです。
テレビやラジオの中国語講座を聴いて、自分で本を買って、ついているCDを聴いてそれを真似る、それだけですね。
趣味は寄席に行くことです。講談と落語。時間があったら寄席に行く、講談を聞きに行く。生まれ変われたら落語家になりたい。
寄席はいろんな所へ探していきます。旅公演の途中でも、今回もどこかでやってないか調べてみたのですが、やってなくてね。あとは茶道が好きで、旅先にもお抹茶とお茶道具を持ち歩いています。
鳴門 吹き替えをされていたようですが舞台との違いを教えてください
野々村 昔、劇団に入ったころやらせてもらいました。「ERシリーズ」をやっていたのですけど、すごく下手で。外国人の吹き替えはすごく難しかったです。どうしても私だけが日本人がしゃべっているという、オンエアをみると外国人ぽくないなって。和のにおいがぷんぷんする。
鳴門 このお芝居の見所は
野々村 私は自分が最初に観たときには、コーチと野球選手の話の三幕目が好きで、そこが好きな女性って珍しいと言われたのですよ、マキノさんから。「そこが好きなのは男だ」と言われて、へえーっ、私ここが凄く好きなんだけどって言いました。何かシビレルんですよね。
鳴門 演劇鑑賞会について一言お願いします。
野々村
私の両親も入っていて運営サークルもやっています。お友達を誘って、その人が1年で辞めてしまったり、介護があってやむを得ず皆さん辞めてしまわれてって、どうしようという話もしょっちゅう両親から聞いているので、どんなにか大変な苦労があるかっていうのは、聞いてるだけですけど、本当に頭が下がります。もし自分がサークルに入っていたら、どういう風に人を誘うだろうなって。いつもクリアしましたっておっしゃっている度に、どうやってクリアなさったんだろうかと思っています。
もっとこうしたら良いのじゃないかとかを私たちが言えるようなことではなくて、本当に一つひとつの芝居をとても熱を持って迎えてくださっているので、それにお応えできるような、呼んで良かった、友達を誘って良かった、面白かったよって言って貰えるように心がけています。「こんなのに誘って」って言われたら私たちの責任だから、そこはもう普通に東京でお芝居するよりもとても重い責任があるなって思います。
一人ひとりがそうやって誘って誘われてという環境なので、私が「観に来て」と誘って、「しょうがないな、じゃあ1回だけ」というのとは違いますからね。なので緊張します。緊張しますけど本当にありがたいと思っています。お芝居をする機会を私たちはもらっているので、ありがとうございます。鑑賞会の皆さんに育ててもらっていると思います。