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町屋圭祐さんに

開演直前インタビュー

楽屋訪問102


 劇団昴公演「アルジャーノンに花束を」鳴門例会(2022年9月8日)で“チャーリー”役をされる町屋圭祐さんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

町屋圭祐

鳴門市民劇場(以下鳴門と略) 6歳児のチャーリーから天才のチャーリーまでを演じていますが、役作りで難しかったところを教えて下さい。

町屋圭祐(敬称略 以下町屋と略) チャーリーは物語の中では、今でいう軽度の知的障害に値する知能しかないんですけれども、知的障害者を演じようとはしないようにしていて、彼本人も自分が知的障害者とは思っていないんじゃないかと。それよりは、絶対自分の知能が高くなれば、周りの友達ともっと仲良くなって、友達が喋っている話題に自分もついていってしゃべれるようになりたい、というふうに望んでいるだけなんです。すごく何ていうか、人に伝えたい、人が好きな純粋な青年という印象があるので、なるべく知的障害なんだというのを演じるのではなく、純粋で素朴な青年を意識して演っています。
 逆に、IQでいうと180と知能が高くなって天才といわれるような人間を演じる時には、THE天才というようなステレオタイプのものを演るというよりも、チャーリーはチャーリーで、「自分はいったい何者なのか」「実験を受けて自分がどうなってしまうのか というのを追い求めている人物なので、そこに集中して必ず何かをずっと探し続けている、追い求めている人物を演るようにしています。それが自ずと見ている方々に、知能が高い何かを追い求めている情熱的な人間に見えればいいなと思いながら演っています。
 一応姿勢であるとかしゃべり方であるとか、そういった外見の工夫も何かしらはするようにしています。僕はもともと猫背なんで、知能が高いときには猫背じゃないように工夫したり、知能が低いときは猫背でもいいかなとか、しゃべっているときに首が前に出てもいいかなとか、そんなふうなことをちょっと気をつけながら演じてます。

鳴門 学生の時「アルジャーノンに花束をの一大ブームがあって、テレビや映画で見て衝撃を受けました。それぞれに終わり方が違っていました。舞台ではどのように演じられるのでしょうか。

町屋 僕はテレビドラマは見ていないので何ともわからないのですけど、舞台ならではのところもあると思います。この舞台は主人公がチャーリーで、チャーリーがずっと変化していくんですが、その人間関係の変化というのが一つ見所かなと思います。
 知能が低いときの周りの人達とチャーリーとの関係、だんだん知能が上がっていった時のその関係性が変化するというところ、そこがひとつの見所かなと思います。
 言うのも照れるんですけど、「本当の幸せって何かな」というところなのかなとも思うんですね。知能が高くなっていくことは人にとっていいことなのか、知能が低くてもいろんな人と触れ合いがあるほうが幸せなんじゃないかとか、いろいろ考えさせられるところだと思うんです。
 「本当の幸せって何なのだろうかって、そういうことが観て感じてもらえたら嬉しいなって思っています。

鳴門 賢くなりたいと本当にチャーリーは思っていると思うのですが、賢くなったチャーリーを演じられてどう感じられましたか。

町屋 チャーリーの言葉で「知能だけでは何の意味もないということを学びました」という言葉があって、そうだなと思うんです。知識だけ詰め込んでも他人の気持ちを想像するということができないとその知能も何の意味もないなと思うんです。
 僕は今年娘が生まれて今5か月になったのですが、初めて父親になったんでどういうふうに育って欲しいかなって思った時に、思いやりをもった子供にはなって欲しいなって思います。別段頭がいいとかそういうことじゃなくても、人の心を想像できるようなそういう子にはなって欲しいなって、今からそれだけは願っているんです。

鳴門 鳴門に来られたのは初めてですね。鳴門は渦潮が有名なんですけど他に期待していることはありますか。

町屋 ちょうど明日渦潮を見に行こうと計画しておりました。四国自体がほぼ初めてです。何年か前に劇団とは別の演劇ツアーで来たことはあるんですけど。その時もスタッフとキャストを兼ねていてドタバタしていて、とても観光とか余裕がないような状態でしたし、もちろん徳島自体も来ることがなかったので、だからこの地に来るのは初めてです。なので、何の前情報もなく来たのでどんなところなのかなって滞在しながら楽しめればいいかなとは思います。

鳴門 小さいときの夢とか、こんなになりたいとかあったと思うのですが、この世界に入るきっかけと、劇団昴を選ばれたのはどうしてかを教えてください。

町屋 きっかけの質問をされるのが一番困るんですが、というのは小さいころから役者を目指していたとか、有名な俳優さんを目指していたとかそういうんじゃ全くないんです。
 大学の時に演劇部に入って、今までやってきたことのないことをやってみようということで演劇部に入ったのがきっかけで、そこで演劇の面白さみたいなことに気づいて。教育大学の子供文化専攻で、保育士になろうと思ったこともあるんですよ。
 ただ自分がその時興味があることが演劇だったので、その演劇の道に進もうということなので、大学を卒業しても就職とかせずに演劇の勉強ができるところ、「富良野塾」というところに行って、北海道にある脚本家の倉本聰さんが主宰している塾があって、そこに行って演劇の勉強をしました。富良野に行って、演劇の基礎というのが大事なんだと気づいて、もう一度一から勉強しなおさなきゃなと思って、東京にある演劇学校に入ったんです。そこが劇団昴とつながりのある演劇学校だったので、演劇学校で二年間勉強して、その後劇団昴にそのまま入ったということです。本当に行き当たりばったりであまり自慢できるようなきっかけじゃないんですけど。
 富良野塾は2年間で卒業する所なので、僕はプラスOBとして一年間いたので計三年間いました。(倉本聰さんは厳しかったですか?)厳しかったですね。もう怖かったです。ものすごく怒鳴られたし、とんでもないいろんなことを言われてそれがきっかけで僕はお芝居の基礎をわかっていないんだと気づかされて、東京へ行くきっかけにもなりました。

鳴門 お芝居が一番好きだと思うんですが、仕事以外に気分転換とか楽しんでいることがありますか。

町屋 子供に絵本を読んであげることとか子守歌を歌うことであるとかですね。「金魚のひるね」って歌とか童謡ですね。4、5か月になると抱いて童謡を歌うと何か反応するんですよね。ニコニコ笑ったり。で、絵本を読んであげても何かしら読んでいる間はじーっと聞いているし、自分でページをめくろうとするし、それが今一番楽しいです。勿論、泣き叫んだりしてどうしようもない時とかは、本当に大変なんですけど、「こっちが泣きたいわと思いながらあやしています。でもまあそれが楽しいです。

鳴門 演劇鑑賞会について考えられていることとか、何かメッセージがありましたらお願いします。

町屋 鳴門市民劇場の皆さんにというと、四国ですと県庁所在地に市民劇場さんがあってという形が多かったんですけど、鳴門市で鳴門の方々がやっているというのが凄いなと思いますね。そのような地方の鑑賞会が東京から劇団を呼んでいただいてっていうことは、凄くありがたいです。是非頑張っていただきたいと思います。
 皆さんは演劇を演るということはないんですか?もし機会があるんでしたら自分たちでも演ってみるとまた観るときの観方も変わって面白いんじゃないかと思います。
 演劇って時間・空間・人間という遊びの三大要素がある。遊びのための三つの間、それさえあれば誰でもできるので、だから、市民劇場の皆様でもやってみたら、そういうお芝居を僕は観てみたい。
 僕らは慣れているというのもありますけど、慣れすぎてはいけないというところで演っているので、逆に皆さんのやっているのが新鮮だと思うんで、そういうのを個人的には観てみたいと思っています。

インタビューアー

E-mailでのお問い合わせは、         鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
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