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水野千夏さんと今本洋子さんに
開演直前インタビュー

楽屋訪問105


 劇団朋友公演「コルセット」鳴門例会(2023年3月15日)で“小林久莉子”役をされる水野千夏さんと“菅原芳美”役をされる今本洋子さんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

水野千夏さんと今本洋子さん"

鳴門市民劇場(以下鳴門と略) 作品について質問させていただきます。
 女性が社会で活躍できる時代になりましたが、それでもまだまだ男性中心の社会です。
 今回、お二人で下着メーカーを立ち上げ、今本さんは仕事を選び、水野さんは家庭を選ぶ役柄を演じられています。その選択の際に悩みや葛藤があったと思いますが、同じような悩みを持つ世の女性たちに伝えたいことを教えてください。

今本洋子(敬称略 以下今本と略) 『ら・ら・ら』の初演の時に、演出の黒岩さんと太田さん書き下ろし作品2本目をやりましょうって話になったんです。私と千夏ちゃんと作家と演出家とで、何年もかけて本を読んだり映画を見たりしたんですが、なかなかこれという作品に出会えずに来ました。
 私、結婚してるんですけど子供がいないんです。30、40歳代は子供がいないということで、親に孫の顔を見せてあげられないっていうのが、すごく苦しくて罪悪感でいっぱいの何十年かを過ごしました。
 人として、女として、どうなんだろうって…。好き勝手に芝居をしているように感じてたんですね。だけど50歳をすぎて、これは私が選んだ人生だし、どう輝いて生きるのか、という風に思えてきたら、すっと楽になったんです。50歳を過ぎて感じていることを作家の太田さんと話をした時に、じゃあそれを作品にしてみようってことで、悩みの中から「コルセット」が生まれました。だから今は悩みはありません。

水野千夏(敬称略 以下水野と略) 私も洋子さんと同じで、結婚はしてますけど、子供はいなくって。子供がいる同級生は、会ってもみんな子供の話になるでしょ。何だろう、このモヤモヤした感じはって思うことがずっとあった。そこから立ち上がっているものなので、この「コルセット」をやることで、一つ楽になった。

今本 実は、50代がメインになっている芝居ってあまりないんですよ。抱えてる問題はたくさんあるけど、ドラマティックじゃないから、それが絵になっていかなかった。若いとか、人生をどう老いるか、ということはすごく取り上げられているんですけどね。だから実は、「これじゃん」っていう思いです。

鳴門 タイトルの「コルセット」は素晴らしいネーミングと思いますが、この作品の舞台が女性の下着メーカーになった経緯について教えてください。

今本 作家と演出家と四人でいろいろと話をしているときに、「50代をやるにしても何を?どういう背景で物語を起こしていこうか」となりました。千夏ちゃんが「デザイン関係、物を作るっていうのがいいかなあ」、「そうだよねえ、じゃあ、何つくる?」って言った時に、誰が、どういったかは覚えていないんだけど、「女の話だからねえ」って。「下着かなんか」って言ったら、男性二人の食いつきがスゴクて、とても盛り上がってきたのよね。「それがいい、それにしましょう、下着メーカーにしましょう」って。私も「ブラジャーっていうのはこう」で、って言うと、「へえ~」って興味津々で。「これは下着で間違いないね。ね!千夏ちゃん」って。

水野 題名のコルセットは太田さんです。

今本 締め付けているものを外して、自分らしく生きるっていうことで、コルセットっていう題はいかがでしょうかって。そこからバーっと物語が広がっていきました。
 下着メーカーなので、ブラジャーだけじゃなくて、補正下着などいろいろあります。
 心を開放してご覧になってるから、やってるこっちも楽しくなる。今日もそうであってほしいなと思ってます。お芝居だと思って観ないでほしいと思います。

鳴門 今まで鳴門(四国)に何度も来られていますが、その時の印象を教えてください。四国の印象を含めて。

今本 私はあんまり観光とかしないんです。

水野 私は、スーパー銭湯みたいなところ、大塚美術館、鳴門の渦潮を見に行ったこともあります。

鳴門 この世界に入られたきっかけを教えてください。

水野 小学校1年生の時の担任の先生はおじいちゃん先生だったんですけど、子供の為の台本を書いたり、童話を書いたりする先生だったんですね。必ず読み聞かせみたいなのが週一回あって、その先生が子供のために書いた芝居をやったりしていて、そこから影響を受けていています。
 小学3年くらいの時に「千夏も本を書いてみれば」って言われて一つ物語を書いたら、「じゃあそれを芝居にしてみたら」って言われて、今度は台本を書いて、クラスでやる何とか会みたいなところで上演したんです。そういうのが根底にありつつ、中学高校は、お嬢様学校で「お琴の授業」があり、挨拶は「ごきげんよう」っていうような学校でした。そこで演劇部に入ったら、そのままどっぷり6年間演劇部。そして高校3年の時に、先生に「お前はバカすぎて、行ける大学はない」といわれたので、「じゃー役者にでもなるかなって言ったら」、「そうしなさい、先生が応援するから」って。お二人とも、もう亡くなっちゃいましたけど、小学校1年生の時の先生も、高校3年の時の先生も亡くなるまで、いつも芝居を観に来てくれていました。

今本 私は、バスケットを小学校から高校1年生までやってて、怪我をしてメンバーから外れたら面白くなくなって、部活を辞めました。家でゴロゴロしてもつまんなかったんですよ、でね、クラスに大嫌いな女の子がいたんですけど、私は人を嫌いになることはそんなにないので、どうしてその子を嫌いなんだろうって興味がわいたんですね。私出身は広島なんですけど、「あんた何部?」って聞いたら、「演劇部」って言うけん、演劇部に入ったんです。広島の舟入高校の演劇部は、原爆劇を書く伊藤隆弘先生がいらして、結構全国大会に出場していたんですね。そこで主役とかしたら、火がついちゃって、今に至っています。その後もそのまま桐朋学園大学の芸術学部に入ってたんです。大嫌いだったかおりちゃんって女の子とは今でも大親友です。

鳴門 仕事以外で好きなこと、興味があること(趣味でも)を教えてください。

今本 私ね、動物がいると見ちゃうんですよ。動物園に行くとかではなくて。
 鶯も、最初からホーホケキョケキョケキョケキョって鳴けるわけじゃないのね。朝5時から起きて、ベランダで鶯が上手に鳴けるようになっていく過程を聞いたり、カラスの子育てを見たりとかね。カマキリの子供が洗面所にいたら、すいか食べさせてみたりとか、動物が大好きなんです。人生をやり直すとしたら、飼育員になるのもいいしかな。でも動物になったほうが早いよね。

水野 水野家の家系は、デザイナーと名の付く仕事をしている人間ばっかりなんですね。親は、美大に行ってほしかったらしいんですけど、なんせ頭がなかったんで、私ではなくて妹が美大に行きました。もし美大に行っていたら、デザイン系の仕事をしてたんじゃないかな、絵とか字を書くのが好きです。今でも芝居やってない時は、量販店でPOPライターをやってます。POPライターはお店に2、3人いるんですけどね、文字や値札、なんとかコーナーとかを手書きする仕事なんです。
 Tシャツの黄色い絵、あれは、朋友の朋は月二つで、「友だから月二つを友達にしちゃえ」って。この辺(Tシャツの裾のあたり)に書いたのをみんなが「いいじゃん」って。そのまま(岸)ゆりえちゃんが図に起こしてくれて。だからよく見ると、私が書いたとおりにやってくれたから眉毛が曲がってるんですよ。今回のコルセットのTシャツは、裏面はゆりえちゃんがデザインしてます。

今本 ゆりえもすごい才能があるよね。

鳴門 私たちのような演劇鑑賞会の活動について、考えられていることがあればお聞かせ下さい。また鳴門市民劇場の会員に一言づつメッセージをお願い致します。

今本 鳴門市民劇場さんというか、全国的には厳しい中ではあります。どこでも、ネットでも何ででも芸術って観ることが出来るし、だけど、生の息と息がそこで触れ合うっていう演劇をまずは観てもらうチャンスがあるんだったら、ぜひ参加していただきたいということと、一本の芝居を観たあとに、「あぁーだったね、こうだったね」って。面白い物ばかりではないし、人が面白いと思っても、私は面白くないかもしれないし。その話をするってことが、自分を磨くことであり、感性が磨かれる。それがコミュニケーションだと私は思うんです。せっかくこういう鑑賞団体があるんだから、参加し体験してお友達に「こういうことあるよ」って伝えてほしいですね。人生いい時もあれば、そうでもない時もある。きっと、人と結びついていると、乗り越えられるんですよ。だから若いうちから参加していただきたいなって思います。

水野 東京に何十年も住んでますけど、東京は芝居を掃いて捨てるほどやってますよ、毎日。だけど、観に行くかって言ったら、友達が出てるから観に行こうとか、付き合いで観に行くような感じで、自分でなかなか行かないです。だけど、こういう年間6本観られる市民劇場という会はすごい。だって、劇団が来てくれるね、私の町へ。会館が前と変わって、ここまで来るの大変かなって思う方もいらっしゃるかもしれないですけど、こんな贅沢で楽しいことはないと思っていて、東京にいてもこういう鑑賞団体は羨ましい。そこに参加すれば、劇団が来てくれる。とてもいい経験が出来る。贅沢なことだと私は思うので、ぜひみんな、若い人も一回観てもらって、「コルセット」面白いじゃないか、じゃあ次の芝居はどんなだろう?ってなって、そしたらみんな参加したくなっちゃうかなって。そうやって、お友達にも広げていけたらいいんじゃないですかね。

インタビューアー

E-mailでのお問い合わせは、         鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
まで。