演劇鑑賞団体の皆さまへ
今回観て頂く「星をかすめる風」は、2020年9月、東京公演で初演 を迎えた作品です。
コロナ禍の最中に上演され、芸術の役割、魅力が最大限に発揮された舞台として多くの反響を呼びました。この作品をまた皆さまと共有出来ることをたいへん嬉しく思います。
2020年9月の初演時、韓国の国民的詩人ユン・ドンジュの美しく抒情的な詩や芸術作品が持つ力の大きさを示した舞台として多くの反響を呼んだ作品です。
壮大なミステリードラマを是非お楽しみください。
秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場
公演ちらしより
「星をかすめる風」と尹東柱
この物語は、韓国で国民的詩人として敬愛される尹東柱の福岡刑務所での最後の日々を描いたものだ。1917年に北間島 (中国延辺)で生を受け、27歳の若さで獄死するまでの短い生涯は、すべて民族の暗黒期にあった。しかし、暗鬱な時代にあっ ても、必ず訪れる朝を信じ、母語朝鮮語で清明な抒情性あふれる詩を書き残した。
延禧専門学校(現・延世大学)卒業後、来日し立教大学と同志社大学で学び、同志社大学在学中、治安維持法違反の疑いで特高に逮捕された。懲役2年の刑が確定し、福岡刑務所に収監されたが、1945年2月16日未明、民族が解放されるわずか半年前に獄死した。
原作「星をかすめる風」では福岡刑務所で働く若い看守が出会った二人の人物、鉄格子の中に閉じ込められていた平沼東柱 (尹東柱)と、鉄格子の外で彼を見張っていた看守の杉山道造が 描かれている。無学な杉山は尹東柱のような文学に精通した人間を嫌ったが、やがて尹東柱の詩に惹かれるようになる。 収監されていた囚人が脱獄用のトンネルを掘るが、何故か尹東柱はその途中から資料室に向けて掘る。自由を求めて塀の外へ 脱出するのではなく、自由を求めて「文字の中、文章の中」への脱出を図るのだ。
一見、奇想天外にも見えるが、文化こそが真の自由への道だと信じる作者の強い信念が一貫して底を流れているのを感じる。 尹東柱の詩を読む時、清らかな抒情の質とともに、外なる権威やひとつの時代の価値観にとらわれない自由な輝きがあることに気づく。実存思想を有していた尹東柱は、詩の言葉は時を超えて人々の心に届き、社会に立ち向かう力を持つことを信じていた。
そこに作者は深く共感し、鎮魂と平和への祈りを籠めて人間の心の深淵に迫るこの物語を誕生させたのだろう。
尹東柱が福岡刑務所に収監されていた時期の記録は全く残っていない。真相は闇の中といえる。
作品はあくまでフィクションであるが、無実の若者が獄死させられたという歴史の真実に思いを馳せて頂けたらと願う。
楊原泰子(やなぎはらやすこ)
(詩人尹東柱を記念する立教の会)
公演ちらしより
あらすじ
終戦間際の福岡刑務所。看守の杉山が何者かに殺され、若い看守、渡辺は杉山を殺した犯人捜しを命じ られる。聴取を進めていた渡辺は、日本名「平沼東柱」こと「尹東柱(ユン・ドンジュ)」という若い詩人が 関係していると確信する。はたして、この人物は何者なのか?杉山を殺したのは一体誰なのか?事実を明らかにした渡辺の前に、意外な真実が待っていた・・・。
公演ちらしより
シライケイタ 劇作・演出
温泉ドラゴン「悼、 灯、 斉藤(とう、とう、 さいとう)」 演出、 温泉ドラゴン 「続・五稜郭残党伝~北辰群盗録」 脚本・演出、青年劇場 瓜生正美追悼公演「殺意」演出、劇団東演「獅子 の見た夢」作、 劇団民藝 「ルナサに踊 る」演出、イッツフォーリーズ音楽劇 「獅子吼」脚本・作詞、 他多数
公演ちらしより
葛西和雄 | 広戸聡 | 板倉哲 | 大木章 |
所長 | 看守長 | 森岡院長 | 囚人 |
島本真治 | 北直樹 | 中川為久朗 | 高山康宏 |
崔致寿 | 杉山道造 | 囚人 | 囚人 |
岡山豊明 | 矢野貴大 | 塚原正一 | 星野勇二 |
渡辺優一 | 尹東柱 | 囚人 | 囚人 |
藤代梓 | 安田遼平 | 傍島ひとみ | 小切伊知子 |
看護婦大山 | 囚人 | 岩波みどり | 看護婦上原 |
原作:イ・ジョンミョン 「星をかすめる風」鴨良子訳(論創社刊)
脚本・演出:シライケイタ
美術:乘峯雅寛 照明:阿部康子 音楽:加藤史崇
音響:佐久間修一 衣裳:宮岡増枝 映像:浦島啓
舞台監督:松橋秀幸 宣伝美術:小田善久 イラスト:鈴木理子
製作:福島明夫 沼田朋樹
企画協力:論創社 宣伝写真:石川純
藍住町総合文化ホール 2024年3月23日(土) 13:30~ 上演時間 約2時間20分(休憩15分含む) ※約350台の無料駐車場あり(他施設と共用) |
あわぎんホール 3月21日(木) 18:30~ (徳島市民劇場) |