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島田大翼さんに
開演直前インタビュー

楽屋訪問118



 オペラシアターこんにゃく座公演「オペラ『あん』」鳴門例会(2025年5月16日)で“千太郎”役をされる島田大翼さんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

島田大翼さん"

鳴門市民劇場(以下鳴門と略) オペラにして舞台化されたことで、どのような作品になったのか教えてください

島田大翼(敬称略 以下島田と略) 最初にオペラでこれをやりますと言われたとき、僕は小説を読んだのですが、これをどうやってオペラにするのかなと思いました。オペラってファンタジーの方がやりやすいと思っています。突然歌いだすという不自然さとかもどうしてもあるので、どうなるのかなと思っていたのですけど、ドリアン助川さんが、新たにオペラ台本として書き直してくださったのです。多分、オペラ台本って、そんなに書かかれたことがないかと思うのですけど、オペラになっていてビックリしました。普通の演劇に比べてもオペラというのは、オペラならではのモノローグとか手紙を読むとか、そういう所はただしゃべっているだけではやりにくいだろなっていうのを、音楽にすることで伝えやすくして情景描写に関しても、みんなで歌うコーラスをうまく使っていると思っています。

鳴門 どら焼きの雇われ店長「千太郎」を演じられていますが、徳江と出会って心境がどのように変化したのかを教えて下さい

島田 千太郎って役は刑務所から出てきて、借金を返すために仕方なく働いていると思うのです。それと、美味しいどら焼きが作れるようになるということは別に、徳江さんを見て感じた(僕が演りながら感じることでもあるんですけども)、誰かを喜ばせるために作っているということが、それまではあまりなかった。その感覚を持てるようになったのが徳江さんと出会ってからだったのです。実は、僕自身お菓子を作るのが好きなんですが、一時期、パティシエを目指していたことももあるのです。今でもケーキを作ったりとか、こんにゃく座の仕事としても任されることがあって、80人分ケーキを作ったりしています。(一同驚きの声)そういうこともあり、歌を歌ってお客さんに聞いてもらう事も含めて、人に喜んでもらうためにやるという感覚は、僕の中にも大いにあります。今まで何かあることを持っていなかった人が、持てるようになったとしたら幸せなことだろうと思って演っています。

鳴門 ハンセン病という重いテーマを含んだ舞台ですが、この作品を通して伝えたいことを教えて下さい

島田 具体的にこういうことを感じて欲しいとか、考えて欲しいとかをあまり思わずに舞台に立つ方ではあるんです。こういうふうに思ってくださいとは押し付けたくない感覚もあるんです。 昨日の徳島市民劇場の例会は、小学生無料招待で結構な数の子たちが来ていました。年間半分くらいは学校公演で、子供たちの感想を聞く機会も多いのですが、どういう風に感じていただいてもいいといつも思っています。ただ楽しんでもいいし、悲しい出来事もあるから悲しんでもいいし、あるいは怒ってもいいと。
 楽しいお芝居は多いと思いますが、「あん」は怒る場面もあると思います。世の中の不条理だったり、徳江さんが差別を受けていることとかを観た時に。喜怒哀楽は、どう感じてもらってもよくて、オペラの劇中でも「人は感じるために生きている」と話しますが、デカルトの「われ思う故にわれあり」ではないんですが、感じることを通して、自分を知っていく事がいいんじゃないかなと思っています。

鳴門 2016年5月公演「オペラネズミの涙」で鳴門(四国)に来られていますが、その時の印象を教えてください

島田 僕は、ネズミの婿入りしてきたニッケルという役だったんですが、普段、学校公演が主で、トラックの運転をするので結構忙しくて、地方に行ってもあまり楽しむ時間がなくて帰ることが多いのですが、前回は時間があったので、ホールの近くの「いのたにラーメン」を食べました。美味しかったです。「ピーベリー」という喫茶店でチーズケーキを買いました。わりと楽しんだ覚えがあります。

鳴門 この世界に入られたきっかけを教えてください

島田 音楽を生業にしようと思ったのは小学生の頃なんですが、最初は作曲家になろうと思って、ギター、ドラム、ピアノを始めて、色々やっている内に歌をやることになってしまいました。
 東京教育大学に行っていたんですが、子供たちに音楽劇を教える授業を受けていて、その時にこんにゃく座の方が指導に来たんです。初めてこんにゃく座を知って、オペラはもともとイタリア語が普通ですが、日本語のオペラをやっている団体があるんだなあと思いました。
 祖父が国語の先生だったからか分かりませんが、結構日本語への執着心が強いところがあって、日本語でオペラをやっているのは面白いなあと思い、そのまま入ってしまいました。
 あまり、お芝居をやろうという感覚はなく、今でも音楽家だと思ってやっているところがあります。
 大学に入った時点では、ドラマーになりたかったのですが、打楽器科に入ったわけでなく、音楽史を勉強する学部にだったのです。
 勉強している内に、色々なことを知っていく中で「オペラは面白いぞ」と思うようになり、特に、こんにゃく座はいろんなことをやらなければいけないのでとても面白いです。歌や芝居だけでなく衣装を作る、車を運転する、楽器を演奏するという、色んなことをやらなければいけないところが、自分には合っていて全部面白いです。

鳴門 仕事以外で好きなこと興味があることを教えてください

島田 昨日も本番がお昼ぐらいに終わったので、そのままホテルに着いて、トラックに中で3時間ほどアコーディオンの練習をしていたんです。ピアノやアコーディオンなど楽器を弾くのが好きなので、暇さえあれば楽器を弾いたり、服を作ったりしています。
 劇団の仕事は仕事でやるのですが、副業で服を作って販売するというのが好きです。一応自分のブランドがあって「ネットで注文を受けて売る」というのをやっています。今履いているズボンは「ダボン」という名前で、動きやすくて、ポケットが大きいところが評判良くて、こんにゃく座のみんなも履いています。。
 時間の使い方として、出かけたりするのは好きではなく、何かを作るのが好きです。休みには、こんにゃく座の稽古場の棚を作るとか、自分の家の棚を作るとか、ほとんど趣味でやってますね。最近は、男子トイレの便器の仕切りを勝手に作りました。
 モノ作り、ケーキ作り、料理、木工、洋裁も好きですね。最近、楽器を作るのも好きです。実は舞台の仕事とは別に、お芝居にピアノで伴奏をつけるという仕事をしています。手はピアノを弾くのですが、足が空いているので何か演奏できるものがないかと、色々作って試してみたりしていますね。いろいろ考えてマラカスや鈴を作ったりするのが好きですね。
 小さい時に、自動販売機を作ることを思いつき、画用紙とかでいかに自動販売機が作れるかを考えて、これを押したらこれが出てくるというのができないかということを、なぜかずうっとやっていましたね。
 また小さい頃は絵を描くのが好きで漫画家になりたかったのですが、だんだん音楽になっていきました。今も絵を描いたり、映像の仕事も好きなので、こんにゃく座のYouTubeやホームページの動画も全部僕が作っているんです。
 映像と音楽をリンクさせることを考えるんですが、これは小さい頃ディズニーの映画が好きで、そればかり見てたんですね。そのために、大学の卒論は「ディズニーのアニメにどのように音楽がついているか」というのを研究して論文にしました。そういうところから今舞台に立って音楽やお芝居をやるというのに繋がっていると思います。
 両親は学校の先生なのですがバンドもやっていたので、音楽は楽しいなあと思っていたんですが、自分がやるとはあまり思っていませんでした。でも、ファミコンとかのゲーム音楽が好きで、ピアノで弾けないかなあと思い、聞いて覚えてピアノで弾けるようになり、そこからピアノも面白いと思うようになって、高校3年間習うことになりました。今思えば、ゲームやアニメをきっかけにして音楽をやるようになった事が大きかったと思います。
 自宅は、床に楽器が並んでいる感じですね。インドのシタールなど弦楽器だけで10種類ぐらいはあって、中国の二胡とかギター、ベース、ウクレレもあります。
 趣味でもあるんですが仕事にも使えるので、ただ趣味を仕事にしているだけの人間です。歌うのが好きで、歌うには伴奏が必要で、自分がやるのが手っ取り早いというので、ピアノも弾くしアコーディオンは伴奏楽器としてはとても優れていて、音も大きいしどこにでも持っていけるし歌えます。

鳴門 演劇鑑賞会の活動について、また鳴門市民劇場の会員に一言メッセージをお願いします。

島田 四国で徳島だけ2か所あるんですね。(全国は)減っていっているのに続けて増やしているということが本当に凄いなあと思います。僕らは一生懸命練習して、お芝居を観ていただく、観ていただいて、喜んでくれる方がいるから僕たちも頑張れているという風に思っています。
 今回のお芝居の中のセリフにもあるように、皆さんに感じていただけるからそこに存在できます。オペラ自体を感じて、喜んでもらえることで初めて芸術として成立していると思います。
 温かく迎えていただいてありがとうございます。僕たちも喜んでいただけるための努力を怠らずに頑張っていきます。 今日の舞台も一生懸命やらせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。

インタビューアー

E-mailでのお問い合わせは、         鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
まで。