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音楽劇 「母さん」

山彦の会

2008年7月13日(日)鳴門市民劇場例会

作者より かいせつ・あらすじ サトウハチロー キャスト スタッフ 上演予定
色紙 感想集


音楽劇 「母さん」ちらし表

「母さん」によせて 堀江安夫

舞台写真1

  一度だけ、お袋が号泣するのを見たことがある。中学生の頃だ。二つ年上の兄貴と寄ってたかって文句を並べていた時、何かが癇に障ったのだろう、それまで鼻先で聞いていたお袋が突然「まさか……」といった顔で私達を見詰めたかとおもいきや、瞬く間に大声で泣きじゃくり出したのである。どんな悪態を吐いたかは覚えていない。

  が、その時のお袋にとっては余程胸を抉(えぐ)られる痛みだったに違いない、まさしく滂沱(ぼうだ)の涙を流し畳をたたきながら抗議する姿に、兄と私はただただ狼狽え困るばかりであった。元々涙脆い人ではあったが、身を捩(よじ)るほどの慟哭を見せられたのはあの時が最初で最後である。

  サトウハチローの母さん、春さんは滅多に感情を顕わにすることはなかったというが、本当にそうか。佐藤紅緑が「我恋は炭のほむらの燃に易き」とまで情熱を傾けた女性である。生い立ちや育った環境を逃れば溌刺とした娘盛りの春さんが、私には目に浮かぶ。

  それが一転、陰影を深くしたのはその後の変転であろう。相次ぐ子供の夭逝(ようせい)、羊のように小さな躯を蝕む宿痾(しゅくあ)、そして夫との離縁、家族との別離――おそらく春さんは声なき声で子供達の将来を思い、ままならぬわが身を呪い、泣きじゃくっていたのではないか。

  突拍子もないお袋の姿を思い出した時、私の役目はそんな春さんが胸底に秘めた号泣に、少しだけ耳を傾けることではないかと思うようになっていた。

公演ちらしより
初演の舞台写真

−かいせつ・あらすじ−

  戦後60年がたち日本中が経済復興に躍起になり、物が溢れるほど豊かになりました。しかし反面心が貧しくなり家族の形さえ崩れかけてしまっています。経済成長の中で女性が社会進出を果たし、自立できる環境が整う一方、残念な事に離婚が増加し子どもたちの心が生き場を失い、泣き叫んでいるように思えてくるのです。

  この深刻な時代にサトウハチローの生い立ちの中から現代の少年の孤独感、喪失感そして、家族の暖かい絆の大切さを感じ取って欲しい。

  ハチローは女性関係が絶えなかった父との確執、そして母からの愛情に確信できないもどかしさから反発を繰り返す。落第3回、転校8回、勘当17回と心の中は荒れすさみます。手を焼いた父親はしばらく島で生活をさせようと福士幸次郎に預ける。島送りになる日、見送りにきた母から優しくかく巻をかけてもらう、が反発し追い返してしまう、背中を震わせ泣くハチロー。やがて離婚した母が実家の仙台へ帰ることを聞いたハチローは何とか母を引き止めようと説得に行った筈が、「父母の離婚で自分達が辛い思いをしている事」を責めてしまう。

  時を経て、大人になって結婚したハチローは自分も父と同じ道を辿っていること、そして、子ども達から母親を奪ってしまったことを責められる。そんなハチローは父母を責めながらち心の中で幼子が母を求めるがごとく「母さん」の詩を書き続けます。

  

  ハチローが書き残した「母、おかあさん、母さん」等の詩は3000編を越えると言われています。音楽劇「母さん」は、多くの人に愛唱歌として唄われている「リンゴの唄」「ちいさい秋みつけた」「長崎の鐘」等と共に、この度上演の為に新しく作曲された8曲を加え、サトウハチローの生い立ちと母への想いを唄い描いています。出演者の心に響く歌声とピアノとバイオリンの生演奏でお送りいたします。

山彦の会       
制作 片山忠彦
舞台写真2


サトウハチロー

サトウハチロー

本名・佐藤八郎。明治36年、東京に生まれる。小説家・劇作家の父・佐藤紅緑に反抗し、勘当、落第、転校を繰り返す。中学時代、詩人の福士幸次郎にあずけられていたために、自然に詩を書くようになり、西条八十のもとで童謡を学ぶ。大正末期には詩壇に地位を確保するが、やがて浅草の軽演劇の台本やユーモア小説、随筆、さらには歌謡曲にも手を染める。戦後は再び童謡に打ち込み、日本童謡協会初代会長、日本音楽著作権協会会長を歴任。紫綬褒章、勲三等の栄を受ける。昭和48年11月没。

公演ちらしより
ウィキペディア(Wikipedia)よりサトウハチロー

キャスト

伊東恵里 真樹めぐみ 山田麻由 浦壁多恵
母(春)
その娘(鳩子)
貴美子(姉)
木曜会の生徒
女中
木曜会の生徒
節(弟)
木曜会の生徒
伊東恵里 真樹めぐみ 山田麻由 浦壁多恵
 
鈴木慎平 佐山陽規 泉 拓允 足立龍児
紅禄(父) 福士幸次郎 サトウハチロー(詩人) 八郎(詩人の少年時代)
忠(息子)
鈴木慎平 佐山陽規 泉 拓允 足立龍児

演奏者  ピアノ…新垣 雄  ヴァイオリン…與那嶺理香


スタッフ

作…堀江安夫
演出…横山由和

音楽…新垣 雄  美術…内山 勉  照明…阿部典夫
音響…橋本達也  舞台監督…末永明彦  演出助手…木村健太
写真提供…株式会社丹渓 制作…山彦の会 片山忠彦


上演予定

 鳴門市文化会館

 7月13日(日) 昼2:00〜

 上演時間 約2時間30分(1幕60分休憩15分2幕75分)

 ※約250台の無料駐車場あり

 郷土文化会館

7月10日(木) 夜6:30〜

7月11日(金) 昼1:30〜

7月12日(土) 昼1:30〜

 阿南市市民会館

7月14日(月) 夜6:30〜


E-mailでのお問い合わせは        鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
まで。