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館野元彦さんに開演直前インタビュー

楽屋訪問41

劇団銅鑼公演「流星ワゴン」鳴門例会(2010年7月10日)で“永田一雄”役をされる館野元彦さんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

館野元彦さん
鳴門市民劇場(以下鳴門と略)
以前、劇団銅鑼の劇団員の方は1999年5月例会に東京芸術座+銅鑼 『橙色の嘘』 として鳴門に来られておりましたが、館野さんもご一緒に鳴門にいらっしゃってたんですか?
館野(敬称略)
ちょうど僕が劇団銅鑼に入った頃に『橙色の嘘』が初演されまして裏方をしていたんですが、鳴門へ来るのは初めてですね。
鳴門
では、今回の鳴門例会が館野さんとしても劇団銅鑼としても、初めてになられる訳ですね。早速ですが、『流星ワゴン』の見どころについてお聞かせください。
館野
僕の感想になってしまうんですが、『流星ワゴン』は思いっきり背中を押されるような芝居ではなくて、観ることによって気持ちが楽になるような芝居だと思います。また、主人公の永田一雄が2人登場します。その2人がどのように絡んでゆくのかというところも見どころですね。
鳴門
2人の役者がひとりの人物を演じている訳ですよね。そういう演出も珍しいなと思い、詳しくお伺いしたかったんですが。
館野
最初に重松清さんの『流星ワゴン』を脚色するときに、青木豪さんを中心に制作や演出が、あの世界を約2時間の芝居に凝縮するのはどうしたら良いのかと知恵を出し合いました。考えに考えた結果が、2人で演じることになったんですね。苦労しただけあっていい様に相乗効果が出ていると思います。
鳴門
ひとりの人物を2人で演じるにおいて、工夫された点はありますか?
館野
まず、衣装が全く同じです(笑)。2人で洋服屋さんに行って、店員さんにまったく同じワイシャツ、同じネクタイをくださいと。靴に至るまで同じなんですよ。
鳴門
店員さんにとっては、男2人がペアの服を買い求める姿は不思議だったでしょうね(笑)。
館野
不思議だったでしょうね(笑)。他にも、地元に紫色の髪をしたおばさんのいる床屋さんがあるんですが、そこで2人とも髪を切っています。
鳴門
細かなところまでこだわりを持って役作りをされているんですね。そこまで、同じにされているのなら、観客は2人の違いを見分けることができるのでしょうか?
館野
そこは、演出ではっきりと違いが分かるようになっています。ご存知のように、この芝居は永田一雄が過去に戻る芝居ですよね。現在の永田一雄2と過去に戻った時の永田一雄1のように、時間の流れの中で演じ分けています。なので、考えてみれば、今日の自分と一年前の自分が、まったく同じ服でなければならないことはないんですけどね。そこはお芝居なので(笑)。
鳴門
確かにそうですね。それにしても、おもしろい趣向ですね。仕草とかも工夫されたんですか?
館野
2人で話し合って何かをすることはないですね。もちろん演出家の指示であったり、僕が勝手に井上さんの癖を取り入れたりはしていますけど(笑)。同じ役であっても、明確に役割が違うので、敢えて近くなろうとか遠くなろうということを考えて役作りはしていないですね。
鳴門
原作ファンの多い『流星ワゴン』ですが、舞台化にあたりプレッシャーなどはありませんでしたか?
館野
舞台にする上で原作を変えている部分があるので、初演の東京公演の時にはどんな反響があるのか、とても気になりましたね。
鳴門
実際のお客様の反応はいかがでしたか?
館野
「原作とは違うけど、よかった」という声をもらってほっとしましたね。というのも、『流星ワゴン』はお芝居独特の舞台らしい表現が詰まっている作品なんですね。舞台のセットも簡素化されていて、効果音や照明がかなり凝っています。セットはもうご覧になられましたか?
鳴門
搬入の時に少し。こだわりのある舞台のようですね。
館野
上にまるい屋根があるんですね。その屋根の中心が切り取られたようにすとんと落ちていて、その丸い板の上で物語が進んでゆくんです。小さい箱が新宿のビルや観覧車、テーブルや電車と、自在に変化します。
鳴門
天井のセットは何を意味しているんでしょうか?
館野
天から切り取られて落ちてきた空間、ですね。
鳴門
ああ、なるほど。ずっと気になっていたんですが、そんな意味があるんですね。館野さんの好きな場面などがあればお聞かせください。
館野
幕の下りる最後の場面が一番好きですね。この為に、これだけやるの?というくらい凝っていますので是非観てください。でも、あまり言うと「なんだ、これだけか?」って思われてもツラいので、これくらいにしておきます(笑)。他には、親父との別れの場面の「立ちション」ですね。心のわだかまりは解けているんですが、すぐ素直に仲良くなれる訳でもなく、でも分かりあえている2人の様が非常に上手に表現されている場面だと思いますね。僕は演じている訳ですから毎回「泣いちゃいけない!」って堪えています。
鳴門
ところで、『流星ワゴン』に出演されている方はお若い方ばかりですよね。
館野
そうですね。『流星ワゴン』班は、劇団昴より客演されてる染谷麻衣(そめやまい)さんを除いて、全員アラフォー世代ですからね。銅鑼としてもこういう年齢の役者ばかりで構成される作品も珍しいんですよ。
鳴門
昨日はウチノ海総合公園でバーベキューをされたそうですが、普段も皆さんで行動されることが多いんですか?
館野
珍しいと言われるんですが、銅鑼のメンバーはよく一緒にいますね。この作品に関わらず上から下まで年齢の幅があっても不思議と一緒です。それは、創立メンバーの時代から民主的な劇団を作っていきたいという先輩の思いが、浸透しているのかもしれないですね。
鳴門
旅先でのバーベキューはよくされるんですか?
館野
ええ、何より先にバーベキューが決まりましたからね。昨日も雨が降っていたんですが、それでもやりましたから(笑)。ウチノ海総合公園はいいところですよね。屋根もあって、設備も整っていて。
鳴門
いいチームワークですね。搬入も役者さん全員が手伝っていましたし。
館野
銅鑼は組み立てもばらしも全員がやります。自分達が使うものですから。それに一緒に作っているから、今日は照明が片方からしか当たらないとか、こういうことしたら危ないとか、説明を受けなくても自ずと分かりますからね。働けるうちは、働いた方がいいということですね(笑)。
鳴門
そういう考えが仲のよい所以なのかもしれないですね。ところで、『流星ワゴン』になぞらえて過去に戻れるとしたらどの時代に戻りたいですか?
館野
銅鑼に入団した時は、僕の同期は3人いたんですね。そのうちの1人が当時付き合っていた彼女が交通事故で亡くなってしまって、それを苦に自殺してしまったんですね。彼から電話がかかってきて「今までありがとう」って言うんですよ。まさか自殺するなんで思ってないから「何言っているんだよ、皆待っているんだから稽古に来いよ」って電話を切ったんです。そしたら……。もし過去を作りかえることができるなら、その電話がかかってきた時にすぐ彼のところに駆けつけて傍にいられたら、あるいは止められたんじゃないかなと思いますね。
鳴門
皆それぞれに、いろんな過去を持って生きてきているでしょうから、そういう苦しい過去を持っている人が『流星ワゴン』に出会うと気持ちが軽くなったりするのかもしれないですね。
館野
人によって受け取り方は違うかもしれないですが、「大丈夫だよ」って、ぽんっと肩をたたいてくれるような作品であったらと思います。
鳴門
ところで、俳優になられたきかっけは?
館野
全然ドラマチックじゃないんですよ。突然友達が「僕は俳優になる、男は一生に一度勝負しなくてはならない時があるんだ、お前もやれ!」って言いだしまして、その流れで、やってみるかということに(笑)。母に話したら、普通は反対するものだと思うのですが、当時、僕はフリーターだったんで「よかったわね、やることが決まって」なんて言うんですよ。たまたま母親の知り合いに青年劇場の中津川さんという俳優さんがいて、紹介してもらったのがきっかけですね。
鳴門
確かに、今までにお聞きした方はほとんどが高校か大学で、演劇に何らかのかかわりをもたれていましたね。そういう意味ではドラマチックじゃないですか。もし、友達から俳優の道に誘われなかったら、どのような人生を送っていたんでしょうね?
館野
俳優でないとすれば、カウンターだけの居酒屋のおやじ、ですね。
鳴門
お料理とかされるんですか?
館野
いや、まったくできないです(笑)。
鳴門
そうですか。でも、居酒屋をするとなったら、きっとお料理も一生懸命習われて、館野さんオリジナルの創作料理なんかも上手に作っていそうですよね。
館野
ええ、気さくに話ができて、毎日たくさんの人が集うお店にしたいですね。
鳴門
館野さんらしいですね。最後に鳴門市民劇場の会員へひとことお願いします。
館野
今回初めて鳴門市民劇場の会員の皆様にお会いでき、嬉しく思っております。以前、僕は広島弁を話す役を演じたことがあって、その時広島の演劇鑑賞会の方にお世話になったことがあります。市民劇場と劇団の関係は、芝居を作る側、観る側というように明確な線引きがあるのではなく、お互いが協力して一緒に舞台を作り上げている仲間だと思います。このような組織は非常に珍しく素晴らしいものだと思いますので、僕らはいい芝居をすることで一緒に市民劇場を盛り上げていきたいと考えています。また、サークルっていいなと思いますね。というのも、サークルはお芝居だけの関係じゃなく、それこそバーべキューをしたり、悩みの相談をしたりできるような、人と人との繋がりを強めてくれる場になっているように感じるからです。そして今日『流星ワゴン』に感動された方が、サークルの仲間をどんどん増やしてくれることを願っています。
館野元彦さんとインタビューア

E-mailでのお問い合わせは              鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
まで。