人形劇団プーク「怪談牡丹燈籠」鳴門例会(2012年9月23日)で“お露”役をされる山越美和さんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。
- 鳴門市民劇場(以下鳴門と略)
- 四国は残すところ、徳島と高知ですね。各地の反応はいかがですか?
- 山越(やまごえ)(敬称略)
- お芝居が終わったら、人形と一緒にホールでお見送りをしているんです。帰られる方も足を止めて人形を触ったりされながらお話をするんですが、人形劇は子供のものと思われていたけど、考えが変わったとか、人形だからこそ表現できる舞台に引き込まれてしまったなど、すごく楽しんでいただいたように感じました。
- 鳴門
- それにしても間近でみると大きいですね。
- 山越
- ええ、でもこのお露はまだ小さい方なんですよ。伴蔵なんかは頭だけでもお露よりひと回りも大きいですからね。
- 鳴門
- それだけ大きいと、手も疲れるんじゃないですか?
- 山越
- ただ、素材が軽いので重さはそんなにないんですよ。発泡スチロールの胴体に布をかぶせて作ります。よかったら、持ってみますか?
- 鳴門
- いいんですか?
- 山越
- どうぞ、どうぞ、胴串(どくし)を左の掌で握ってここに指をかけて・・・(などと持ち方を教わりながら持ってみる)
- 鳴門
- 徳島には人形浄瑠璃という文化があり、私も素人ながらボランティア等の公演で人形を操ることがあるので、今回の人形劇にはすごく興味があったんです。人形の胴串という呼び名も浄瑠璃の人形と同じなのですね。
- 山越
- そうなんですか。人形の基本構造は同じですので、どんな人形も同じ言葉を使っているようですね。さすが普段から人形を操っている方だけあってお上手ですね。初めての方はフラフラしてまっすぐに持つことさえもできないのですが、しっかり芯が通っていて、綺麗に持たれていますね。
- 鳴門
- いえいえそんなことは・・・。意外と軽いですね。浄瑠璃人形より軽いですね。この人形の目とか口とかは動かないのですね。
- 山越
- ええ、顔の表情はうつむいたり、身体や手を動かすことにより表現します。右手を人形の右手に添えることで、物を掴んだり懐から懐紙を取り出したりも出来るのですよ。
- 鳴門
- 左手を動かす時はどうするのですか?
- 山越
- 基本的に左手は動かないですね。どうしても左の動きや、足の動きが必要な時はもう一人ついてもらって動かします。左手と右手を組んでお辞儀するシーンがあるのですが、その時はテグスを仕込んでいますのでこのように(実演)することで、1人でも両手を動かすことが出来ます。人形ごとに求められる動きも異なりますから、役者はそれぞれに工夫していますね。
- 鳴門
- では、ご自身で人形を造られているんですか?
- 山越
- いいえ。人形を造るのは専門の方がいますが、持ちやすいように胴串を削ったり、お露のようにテグスを付けたりとかは役者自身が様々な工夫を人形に施しています。
- 鳴門
- 浄瑠璃人形は、場面ごとに頭を接げ変えたりしますが、この人形もそのようにしているんですか?
- 山越
- 接げ変えることもありますが、このお露はこのままですね。お露は他に2体あるんです。場面ごとに衣裳や雰囲気を変える時、早替わりは難しいので、数体の人形を効果的に使っています。首を刎ねられるシーンはその為だけに1体用意しています。
- 鳴門
- ご自身で動かしながらお芝居をするのは、かなり大変なのじゃないですか?
- 山越
- そうですね。よく言われるんです、「あなたが芝居しても駄目、人形を動かしなさい!」って。感情が入ると自分が動いてしまうのですよね。でもいくら私が悲しい顔をしてもお客さまには見えないので、その気持ちをいかに人形に注ぎ込むかが一番難しいですね。
- 鳴門
- ところで、それぞれの役者が猫を連れていますね。他の演目でも猫が多用されているように思えますが、猫の人形に対するこだわり(猫が果たす役割など)があるのでしょうか?
- 山越
- 先ほどもお話しましたが、浄瑠璃人形のように表情が動いたりしないので、猫への接し方等でそのキャラクターの性格を表してみたりしています。新三郎さんとお露の出会いのシーンも猫が二人の仲を近づけてくれています。
- 鳴門
- 落語の「牡丹燈籠」には猫はでてきませんよね?
- 山越
- ええ、猫はプークのオリジナルです。
- 鳴門
- 山越さんのお気に入りのシーンがあればお教えください。
- 山越
- 難しい質問ですが、敢えて言えば最後のシーンですね。
- 鳴門
- そうですか。舞台も素敵ですよね。
- 山越
- 朝倉先生がこの芝居のためにオリジナルで考えて下さったんです。私たちは「八百屋」といっていますが、舞台が斜めになっているのですね。この床面は黒とグレーの市松模様になっていて、少し光る素材でできています。そこに花の影などが映り込んで幻想的な雰囲気を造ってくれているんです。でもこれは立っているだけで大変な役者泣かせの舞台なのですよ。
- 鳴門
- バランスを取るのが難しそうですよね。このような舞台は『怪談牡丹燈籠』ならではなのですか?
- 山越
- 他の芝居でも演出上斜めの舞台を使うことはあるんですが、初めから終わりまで斜めの舞台はこの作品だけですね。
- 鳴門
- ところで、山越さんは初めから人形劇に興味があったのですか?山越さんと人形劇団プークとの出会いをお聞かせください。
- 山越
- 大学の頃に人形劇サークルに入っていたんです。そこの先輩にプークの劇団員がいて、学生の頃からよくプークのお芝居を観させてもらっていたこともあって、学生の頃からプークがすごく身近だったんです。
- 鳴門
- 役者になろうとは思わなかったのですか?
- 山越
- 自分が舞台に立って演技するのはちょっと違うなと、どちらかと言えば、声を使った仕事をしたかったので、この人形劇というスタイルが一番自分のしたい芝居だと思いプークに入団しました。
- 鳴門
- ところで、ブログを拝見しました。みなさん全国各地でご活躍されていますね。旅に行かれると皆さんで観光されたりするのですか?徳島でのご予定はあるのでしょうか?
- 山越
- やはりその地域ごとにいいところがいっぱいあるので、時間を見つけてその土地の名所を見に行きますね。今回は明日から徳島なのですが、次の日は移動日として空くので何処か見に行きたいです。
- 鳴門
- ところで、山越さんが今はまっていることは何かありますか?
- 山越
- 今もお話ししましたが、劇団のブログを書かせていただいているので、プークのブログを書くことや、他の方が書いているブログを読んだり、交流することが楽しいです。プークのことをもっといろんな人に知ってもらいたいと思いますね。
- 鳴門
- 私たちのような演劇鑑賞会の活動について、考えられていることがあればお聞かせください。また、鳴門市民劇場の会員に一言メッセージをお願いいたします。
- 山越
- そうですね。会員さんを増やしていくというのはなかなか難しいことですよね。そんな中で今、私達が協力出来ることは、一生懸命いいお芝居をするということだと思っています。そのことによって、市民劇場の会員さんがたくさん増えればいいなって思います。私達も頑張りますので、皆さんも一緒にがんばっていきましょう。
E-mailでのお問い合わせは 鳴門市民劇場ホームページ nrt-geki@mc.pikara.ne.jp まで。