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−あらすじ−
舞台は縁の下の戦場。
あっちこっちの前線を旅して回るテンジクネズミの“天竺一座”を中心に物語は進む。
座員は、父親マンガン、母親スズ、息子チタン、娘リンのたった4人の家族だけ。
野ネズミの軍曹、娼婦ネズミも巻き込み演じるのは、ご存じ「西遊記」。
チタンは軍隊に入り、野ネズミの兵隊ニッケルはリンに惚れて旅回りについてくる。
戦争は続く…。米粒より小さいネズミの涙が世界を覆う。
それでも希望を失わず行き続けるネズミたち。 愛と笑いと涙の“天竺一座”の旅は続く。公演ちらしより
作者のことば
萩 京子 (作曲・音楽監督)ものがたりはネズミの世界。このネズミたちは町の中、人間社会の片隅で暮らしている。今はもう失われつつある縁の下の世界かもしれない。ネズミたちの世界のなかで、ネズミたちがどのように生きているか、私たちは見ることになる。ネズミのような、人間から見ればちっぽけな動物が芝居をしたり、戦争に巻き込まれたり、恋をしたり、喜び、悲しみ、絶望し、希望を取り戻したりしながら生きていく姿をとおして、私たち「人間」の愚かさ、けなげさ、そして生きる姿が見えてくる。
鄭義信の叙情性を諧謔性溢れることばたちは、歌となり、さらに自由奔放に飛び交いはじめる。
また、この作品の音楽的な特徴としては、サムルノリ(朝鮮半島の四種の伝統的打楽器を使った音楽)を取り入れたことだ。歌役者たちの演奏する打楽器にもご注目いただきたい。サムルノリは、「西遊記」の下座音楽として語りを支え、立ち回りを盛り上げ、また、登場人物の心情に肉薄する。歌とピアノ、そしてサムルノリが絡み合い、西洋と東洋が不思議な共鳴をみせている。
物語のラストシーンに重なるように、私たちこんにゃく座の旅、新たな挑戦は続く。
公演ちらしより
公演評(抜粋)
●萩京子の音楽は、サムルノリを駆使しながら、ソングや重唱、合唱などでネズミたちの喜怒哀楽を細やかに描き出す。(中略)
絵空事の舞台にもかかわらず、現実の世界を激しく喚起するのは、鄭義信の台本と演出が卓抜な力を発揮しているからだ。(教育音楽/小村公次)●この舞台では演技が歌を溶かし込んでいて渾然一体の、歌と芝居の境目の見えない純然たる歌芝居を達成していた。
(中略)なけなしの元気でなんとか生き続けるネズミたちの姿は今の我々の姿と重なる。それを歌うラストの合唱は感動的だ。(シアターアーツ/江森盛夫)●この物語はいまの現実世界へ投げかけられている。(中略)唯一の芝居が「西遊記」であるのは、野ネズミの家族に三蔵法師一行の物語を重ね、天竺というあるかもしれない希望を求めて進む旅だからだ。その意味では、希望を求める意志がこの物語をつなぎ止めている。
(オン★ステージ新聞/三橋圭介)公演ちらしより
アンケート
●笑いの後に涙、本当にうまいナー!!
チャングの音色が楽しくもあり、かなしくもあり、よかったです。
おっかさん涙はネズミの涙ではなかったー!
戦争は日常のとなりに死があり、よろこびのとなりに悲しみがあるなと思いしらされました。●ネズミの涙は 美しく いとおしい
ハラハラと涙が自然に落ちました。
とてもいい舞台でした。●戦争の中でしたたかに生きていく家族の姿と歌の数々には生きていくことの重みがこめられ感動させてもらいました。たかがネズミの歌声、たかがネズミの涙、たかがネズミの命の重みを感ぜずにはいられませんでした。“いなかった”に等しい存在かもしれませんが。
母親、娼婦の底知れぬ明るさとパワーや旅を通して成長していく様、恋をするシーンなど眼に焼きつくものばかりでした。公演ちらしより
スタッフプロフィール
鄭 義信 Chong Wishing 台本・演出93年に『ザ・寺山』で第38回岸田國士戯曲賞を受賞。映画『月はどっちに出ている』『愛を乞うひと』『血と骨』などの脚本でも数々の賞を受賞。テレビ・ラジオのシナリオでも活躍。2008年新国立劇場とソウル・芸術の殿堂による日韓合同公演で作・演出をした『焼肉ドラゴン』によって朝日舞台芸術賞グランプリ、紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞優秀賞、鶴屋南北戯曲賞などを受賞。
萩 京子 Hagi Kyoko 作曲・音楽監督東京都出身。1978年、東京芸術大学作曲科卒業。
1979年よりオペラシアターこんにゃく座、座付作曲家にしてピアニスト。1997年より音楽監督、2004年、代表に就任。
主なオペラ作品は、『シグナルとシグナレス』(1985)、『ガリバー』(1997)、『ロはロボットのロ』(1999)、『好色一代男』(2005)など。公演ちらしより
スズ (おっかあ) |
マンガン (おっとう) |
リン (むすめ) |
チタン他 (むすこ) |
ニッケル (野ネズミの兵隊) |
タングステン (野ネズミの軍曹他) |
梅村博美 | 富山直人 | 太田まり | 北野雄一郎 | 島田大翼 | 高野うるお |
コバルト (娼婦) |
給仕他 | 難民他 | |||
相原智枝 | 佐藤敏之 | 花島春枝 | 壹岐隆邦 | 熊谷みさと | 高岡由季 |
ピアニスト |
榊原紀保子 |
台本・演出:鄭 義信 作曲・音楽監督:萩 京子
美術:礒沼陽子 衣裳デザイン:出川順子 照明:増田隆芳 振付:伊藤多恵・松原佐紀子
殺陣:栗原直樹 サムルノリ指導:李 昌燮 特殊小道具:渡辺数憲 舞台監督:久寿田義晴
Illustration:伊波二郎 Design:小田善久
鳴門市文化会館 2016年5月26日(木) 夜6:30〜 上演時間 約2時間20分(休憩15分を含む) ※約250台の無料駐車場あり |
あわぎんホール 5月24日(火) 夜6:30〜 5月25日(水) 昼1:30〜 (徳島市民劇場) |
E-mailでのお問い合わせは 鳴門市民劇場ホームページ nrt-geki@mc.pikara.ne.jp まで。