■ 弱肉強食による命の循環、その一つ一つの命の尊さが、ひしひしと伝わる素晴らしい舞台でした。ブンナはもとより、蛙たち、モズ、スズメ、ネズミ、ヘビ、フクロウの役者さんたちの演技力・表現力が抜群で、動物たちの世界にスーッと引き込まれました。
生きるために他者を犠牲にしたり、お追従を言ったり、取り入ったり、人間世界にもある生き方。これは決して動物の世界だけのことではないと思いました。そして、循環の中には人間もいて、人間の行い(農薬散布、環境破壊)によって、痛めつけられる動物たちの姿から、私たちが「共存」していくためには、何が必要なのかと考えさせられました。
「ブンナ」では初めて回り舞台が使われたそうですが、実に効果的でした。また、トンビの登場を満月形の鏡を使い、ガラスの割れるような音響とともに緊迫感を出していて、怖かったです。朽ちたネズミの肉体から生まれ出た虫をシャボン玉で表現し、命の循環が、見事に美しく描かれていてとても印象に残りました。
ブンナの成長は、観ていた小・中・高校生の心にも伝わったと思います。「生きるって、すばらしい。そして尊い、どの命も大切にしよう」と感じ取ってもらえたと思います。大人たちにも。■ 大変難しい課題を殿様ガエルの目線で、劇化している。ラストのシーンでブンナが「生きることとは他の生物の命を頂いて私たちも生きている」と話す。弱肉強食を前面に押し出した内容でしたが、その中で私たちが命のあり方を考え、命について学ぶことも多い様に思えました。
今回は私の中で感動シーンがありました。ブンナが冬眠から覚めてネズミさんの死骸から発生する虫を食べるシーンでした。シャボン玉を作り舞台の空気の流れと舞台の照明とできらきらと輝かせた技法。幻想的で、新鮮で、いままで見たことのない舞台でした。夢の中にいるような感覚に陥りました。このシャボン玉のアイデアは誰から出てきたのか、これが知りたいと思いました。素晴らしい舞台で感動しました。
劇団青年座のみなさま、素晴らしい舞台をありがとうございました。永遠にシャボン玉の記憶は残ります。■ 椎の木のてっぺんの鳶の餌ぐらで、繰り広げられる傷ついた雀、百舌、鼠、蛇たちの言葉の一つ一つが心に突き刺さった。生への渇望、生きるということの残酷さを感じさせられた。
■ ブンナが大きくなるにつれ外の世界に興味を持ち飛び出す。でも、その場所は決して夢にあふれた楽しい場所ではなく、とても厳しい現実の世界。それを体験したブンナが、すぐ身近にある幸せに気が付き感謝する。まさに、かつて自分が通り、今自分達の子供らが通ってきてる道。共感できました。全世界のブンナ、ガンバレ!
■ 木の上の動物達のように他を攻撃したり、卑怯だったり、冷徹だったり、でも後悔したり反省したり、家族を大切に想ったり、善良だったり・・・という性質は人間の心の中にあるものだと教えてくれていると思いました。また、ブンナのように今より成長したい、新しい世界を見てみたいという真っ直ぐな思いもまた人間の心の中にあるものだと思いながら、ブンナが無事に木から降りてこられるかハラハラ・ドキドキして観ていました。劇団の皆さまの熱い演技に引き込まれて、アッという間の時間でした。
■ よかったです。
今がしあわせなのですね。それを気づくまでは、たくさんの経験がいるのですね。■ シャボン玉が舞う空にブンナの気持ちが仲間が出ている。
■ まず、青年座の若い迫力に圧倒されました。それぞれが生きるために一生懸命努力し協力し合っていく様子がユーモアも交えて表現されていた。
■ よかった。
■ 一生懸命に演じていました。シャボン玉に感動しました。
■ 大変よかったです。いろいろ思わせられる、内容の深いお芝居でした。
■ メッセージがいっぱいあって、考えさせられました。
カエルの動き、百舌・すずめ・ヘビ・ねずみ、それぞれの動きや鳴き声がすごく上手でした。■ 内容をあまり把握してなかったのですが、だんだん物語がわかってきて、大変面白かったです。劇団員の若さあふれる動きがよかったです。ぶっつけて、体大丈夫かなと少し心配しましたが、慣れているようですね。カエルの物語ですが、人間の世界にも、いつどんな災難があるかもしれないと思っています。助け合って生きていくのに意味があるのかもしれませんね。
■ 最初から、若手団員の人の動きに圧倒されました。何かトレーニングされてるのかとインタビューで聞いて、なるほど!やはり頑張ってされているのだと納得。内容ですが、あまり気にしていない普段の生活の中に鳥とかカエルとかヘビとか虫とかに愛情を持ってやらねばと、あまり好きでない虫もいますけど、少し思いました。
この度はカエルでしたけど、小中学生の子供たちに観てもらうのはすごく役立つことと思いました。心優しい大人になってもらいたいですね。■ 胸に染みるストーリーで、舞台セットがとても効果的でした。躍動感あふれる演技だったと思います。大変良かったです。
■ 開演と同時に蛙さんが眼に飛び込んできました。衣装の素晴らしさ、歌声に引き込まれていきました。ブンナをはじめ、皆さん素敵でした。命の重みを感じながら楽しい舞台でした。参加された中高生には最高のプレゼントになったと思います。
■ 「ブンナよ、木からおりてこい」を鑑賞して強く感じたのは、命をつないでいくことの苦しみと尊さです。ブンナが天国だと思ってたどりついた椎の木の上は、鳶の餌ぐらでした。そこで出会うスズメ、モズ、ネズミ、ヘビはみな、他の生き物を犠牲にしてでも自分が生き残ろうとします。でも結局鳶の餌にされてしまう。弱肉強食の世界で生きていくことの苦しみを感じました。物語の終盤では、ネズミの自己犠牲によりブンナは命をつなぎます。また、帰って行った池でもカエルたちは人間が使う農薬に苦しめられますが、それでも力を合わせて生きていこうとします。命をつないでいくことは苦しいことだけれど、だからこそ何よりも尊いものなのだと心から思いました。
■ 弱肉強食の自然界の現象を当たり前として生きてきた人間の傲慢さをあらためて反省しました。ものすごく重く、深いテーマを投げかけられた思いです。若い人の精力的な演技に、明日への活力をもらいました。とても良い舞台でした。中高生の人も多く観劇していたと思いますが、このような素晴らしい演劇を観る機会をもってほしいですね。
■ とても良い作品でした。生きているものが必ず迎える死。それまでをどのように生き、その時をどう迎えるか? 個性的な動物たちを通して描かれている人間社会に釘付けになった。役者さんたちの、流れ飛び散る汗がとてもすがすがしかった。
■ 集中して観ることができました。カエルたちの動きが素晴らしい。弱肉強食の世界であるけれど、それによって生がつながっている。一日一日を大切に生きなくてはと強く思いました。
■ すごく面白かったです。弱肉強食の世界で精一杯生きようと、もがき苦しんでいる姿がとてもリアルに描かれていました。私たち人間世界にとっても、自分に与えられた命、人生を懸命に生きていくことの大切さを、この舞台を通じて改めて教わった気がします。
■ 役者さんはもちろん、舞台演出が素晴らしかったと思います。
■ サークル全員が観ることができた。
いろいろなことを考えさせられる劇だった。命の循環がテーマだと思うが・・・。ロビー交流会で出た質問に対して、ニューヨーク公演での評価が「革新的?奇抜、奇天烈」と受け取られたことが不思議だった。
演劇を観る人は、ぜひ一度は、この劇を観てほしいと思った。原作はもちろん、補綴、演出、そして役者たちの演技が素晴らしい。奥深い芝居だ。感謝です。■ 15分の休憩を挟む2時間30分の劇。1幕も2幕も、身じろぎせずに観る。考えさせられる!
台本と演出とは、大部違う・・・と感じた。私の、台本「浅読み」かもしれぬ。
いろいろな面で深いし、演出も素晴らしい。私的には、「羽虫」をシャボン玉で表現したのがイイ。そのシャボン玉を吹くのは、ツチガエルであったり、アオダイショウであったりする。圧巻のシャボン玉が飛ぶシーン・・
その意図が重層的で、私好みなり。死んだネズミの遺骸からわいて出た羽虫を食べて、ブンナは木から降りてくる。「命の循環」を表現しているのだろう。
作者がこの童話を書いた時代に「生態系ピラミッド」という概念があったのか?そんなことをふと思う。それにも増して、この劇が表現しているのは「命の循環」・・・生き変わり、死に変わり、私たちは別の命を糧に生きている。私はネズミであり、羽虫であり、ヘビであり、トビであり・・・だと思う。観劇人にとり、必見の劇だ。
ロビー交流会Q&Aの第一声が小学生だったのもよかった。記念写真撮影後、女優がその子どもたちに声かけしているのも心に残った。もう一つ、「この劇の海外での受け止められ方、評価はどうか?」の質問もポイントを突いていた。劇団としての今後の課題かもしれない。■ 小動物たちの動きをリアルに演じる役者さんたちの熱演に引き付けられた。普段あまり考えることのない、「生きる」というテーマを明解に力強く描いた舞台は、見応えがあった。
■ 久しぶりに感激した。出だしの踊りで、意外と面白いかなと思った。観るまでは、蛙がトンビのエサ置き場である木の上に登り、そこで捕らえられた獲物の死にざまを見る。しかしそれらはどのように演じるのだろうと思っていた。木の上では、主役はブンナでなく、ブンナたちをエサにしていた蛇であり、ネズミであり、スズメであった。彼らが演じる死の直前の煩悩?はすべての生き物に通じると思った。
ラストシーンでのシャボン玉はものすごくきれいであったが、何かはわからなかった。しかし、後で、ネズミの死骸から発生した虫たちと気が付いた。
全体に動きがあり、本当に良かった。■ シンプルでありながら本当に木に登っていくシーンや木の上を想像させてくれるような舞台装置といい、実際の動物を見ているような見事な動きの演技といい、「命を食べる」場面をなんとシャボン玉で描くアイディアといい…、あらゆる演出がすばらしかったと思います。
動物の世界の話でしたが、人間だってあの輪の中にもちろんいるわけで、自分のやっていることは“棚に上げる”“別に考える”という弱さや卑怯さは私たちを含めて生き物すべてにあることを、目をそらさずに直視できる機会でした。そして、それでも、「いきもの全体」をいとしく思うこと、愛していくことに意義があることを改めて考えてみられるよい機会でした。
でも、観終わって時間がたって思い出したのは、誰が言ったものだったか「自分が生きるため以外に他の命を奪うのは人間だけ」という言葉です。弱肉強食で弱いものを「食べる」(食べて、生きる)という動物の世界は、一見目をそらしたくなるような残虐にみえる側面をもっていますが、ニンゲンの世界で起こっている“意味も理由もなく”他を殺すこと以上に残虐なことはありえない。ニンゲンは、必死に生きて必死に死んでいく動物たちの姿からもっと何かを学ばないといけないのではないかと思いました。■ 逆転の発想のドラマなのでびっくりしました。休憩中に何回もあらすじを読みました。地下に潜っている演劇集団。本当にミステリーで、ファンタジックで、よかったですね。しかしナンといっても脚力は凄いですね。何回も練習されて現在にいたっているのですね。華々しい舞台と違い、地味なんだけど何か訴える事を感じ取れました。
すばらしい作品ですね。でもこの舞台を理解するためには、あらすじをしっかりと読む必要がありますね。理解すると感激は倍になるでしょうね。最後ハッピーエンドで終わればもっと良かったのにとちょっぴり残念でした。■ 素晴らしい演技でした。感動しました。周りで笑いが起こる場面も少しありましたが、内容が(自分には深刻で)そんな気にはなれませんでした。でも、あらすじから予想していた(もっと怖い、残酷な描き方かと)のとは全然ちがっていて、シャボン玉のシーンもみなさんの合唱も心に残るもので(怖がらずに…)観てよかったと思いました。
■ 深みがあり、演技に吸い込まれていくようでとても素晴らしかったです。
■ とてもよかったです。開幕から役者さんの演技に見惚れてしまいました。ブンナさんすごいです。また、カエルさんや雀さんの衣装がとってもステキでした。椎の木の演出もすばらしいです。
■ 生命は大きな連鎖循環の中で生きていると、いつも思うのですが、再認識しました。生物の連鎖の中の一住人にすぎないことを忘れてしまっているのでないかと思うことがしばしばあります。例えばネオニコチノイド系の農薬は、農薬というよりは農毒だそうです。アメリカで2006年、ミツバチが四分の一いなくなってしまい、最終的にいなくなる、消滅するとも言われています。生態系に大きな影響を与えます。また、スーパーで売っている加工品のほとんどに遺伝子組み換え作物が入っています。遺伝子組み換えの作物は、その作物を食べた虫たちが死ぬそうです。そんなものを食べる人間もアレルギー、ガン、自閉症を発症しているそうです。テレビではタブーで報道しませんが、人間が考えなければいけない問題がたくさんあると思います。一人が少しぐらい動いても、どうにもならない問題ですが、諦めてしまっていいのだろうか。どんな些細なことも、自分にできることは何があるだろうか、と考える必要があると思いました。
■ 言葉がはっきりしていて聞き取りやすく、それぞれの生き物たちの動きがリアルで、「さすが、青年座!」と感動させられました。生き物はみんな生きることを願いながらも思い通りに生きられない。思わぬところで命を落としてしまう。ブンナの目を通して「生と死」を見つめ直すことができたように思います。
■ 楽しみながら、いろいろ教え考えさせられた2時間余りでした。シャボン玉のシーンがとても綺麗で、一番心に残りました。
■ 蛙の生態をどのようにして演出するのか楽しみにしていましたが、椎の木のてっぺんが回る装置で表現され、生きる模様が演出され感動した! 素晴らしい作品でした。
■ 「弱肉強食」、「食物連鎖」、「我々人間は・・?」、そんな言葉が何度も何度も頭の中を駆け巡っていました。そんな中、一瞬黒い月かと思った鏡に映し出された顔の表情も含めて、全身から表現された「死」を前にしての「生」への思いが重苦しく心の中に入ってきました。しかし終盤になって、ネズミから生れ出てきた虫たちをシンボライズしたシャボン玉が舞台全体に広がっていったとき、心の中のどんよりしたものが薄れていき、「生命のつながり」と「生きること」を考えていました。一日一日を大切に生きていこうと強く思ったものでした。
■ ことばが分かり易く、動きもシャープでした。人生の悲喜こもごもが織り込まれ素晴らしい作品でした。
■ 自然界の生き物、生命そのもの、それぞれの種や個で、どう生きていくのか、シンプルで究極のテーマを、明るく力強く、精一杯生き抜くブンナ達を通して考えさせられました。また、元気をもらいました。皆さんの熱演はもちろん、衣装も素晴らしかったです。特に、ヘビさんの妖しい美しさには観客の皆が魅せられたと思います。回り舞台一つで、お寺の境内になり、見上げるほどの大木になり、土になり、その様子がありありと目に浮かびました。演技も衣装も舞台セットも、全てに引き付けられ、最後まで息つく間なく見入った舞台でした。素晴らしかったです。
■ 正月しめ飾りのお米を食べに飛んでくるのが、今年は何日かな?なんて、それくらいしかスズメには興味がなかったけど、「そうそうスズメって、そんな動きだったよね」って、新鮮だった。ボンヤリ見過ごしていることばかり。コウノトリが鳴門に巣作りをした時、「豊かな自然、豊富な餌場」とのナレーションと同時に、クチバシに大きな蛙をくわえていた。「蛙は餌だったのか」、ちょっと淋しい気もしたが、そういうものなんだ。人間なんてもっともっと、あらゆるものを食べて生きているじゃないか。ただ、猫がネズミをくわえる姿に「よくやった」なんてニンマリするのは、私だけ?
■ さすが青年座の財産演目といわれるだけの、迫力のある素晴らしい舞台でした。
■ 5月例会「ネズミの涙」のネズミ、今例会のカエル、身近な小動物を題材とした演劇。小動物の世界にも生と死のせめぎあいがあり、生命の尊さがあふれる・・・。
役者さんの軽々とした身体表現の巧みさ。簡単な装置ながら、よく考えた舞台装置など、感動の例会でした。
ロビー交流会もよかった。■ 入会して日も浅く、4、5回しか観劇していないのですが、今回のは一番見ごたえがありました。ヘビの衣装が特にユニーク。笑いあり、涙ありで、さすがプロ・・・
演技の巧みさに吸い込まれた2時間でした。中高生に特に観てほしい、とも・・・傷ついたスズメの演技、沢山のカエルの迫力ある動きも目に焼き付いています。■ とても迫力がありました。トビに連れて行かれる時に本心が出てくるのが奥深かったです。鏡はトビの目なのでしょうか? 舞台装置も色々に想像するのが楽しかったです。
■ よかったです。正直あまり期待していませんでしたが。ただ、水上勉作?と、その一点のみで会場へ。しかし考えさせられることが沢山ありました。弱肉強食、輪廻転生、生き抜くことの難しさ、生かされていることの大切さ・・・今回が中高生招待鑑賞会で本当によかったと思いました。また、役者さん達の熱演にも感動し、あくる朝、庭で見かけた雨がえるにとても親しみを覚え、一人で笑っていました。
■ ブンナを中心としたカエルの世界を、生死をかけた壮大な戦いを繰り広げる中で生きることを考え、秋から春への長い椎の木の上の生活を通して得たものは、「生きる」ことがいかに大変なことかを悟ったブンナである。ミュージカルを交えて素晴らしい演技をしていただいた劇団青年座の皆さまに大変感激した次第です。
■ 開幕直後、照明がほんの少し入った時点で、この劇の成功は疑いようもなかった。厳しい稽古で鍛え上げられた役者の四肢、洗練された力強い演出が一瞬にして見て取れたからだ。しかし、その後の舞台は予想をさらに上回る迫力で、生徒たちも私も吸い寄せられるように見入ってしまい、2時間の間に15分の休憩が入るのがもったいないと感じられるほどだった。
その休憩時間、若州一滴文庫版原作とパンフレットを買った。私より若い同僚に今度「ブンナ」を観に行くんだという話をすると、「懐かしい!」「それ、子どものとき学校で観た!」と言う声がいくつか返ってきたが、私はその高名だけは知っていたものの原作も読んでおらず舞台も観たことがなかった。「蛙よ、木からおりてこい」の初版が1972年で、青年座初演が1978年。ちょうど子ども時代を脱したころで、観劇の機会を逃したままになっていたらしい。
人でないものをあそこまでリアルに演じるために準備された身体能力の力強さ、人体の動きや声を楽しませ、もっともっとと心待ちにさせながら物語世界へ引き込んでいく細部まで行き届いた技量。これぞ役者、俳優の仕事というものはこういうものなのだと改めて感じ入った。
また、工夫され洗練され尽くした椎の木の装置や、あらがえない脅威としての鳶を巨大な鏡で表現した演出の発想にも舌を巻いた。鏡は鳶の目であり、死の恐怖にゆがんだ獲物たちの表情を無慈悲に映し出す。さらに圧巻だったのは、ねずみの死体から生まれ出た羽虫を大量のシャボン玉で表現したところで、すでに逝った生き物たちが楽しそうにシャボン玉を吹き、ブンナがそれを無心に食べるという象徴的な場面は、いつまでも終わらないでほしいと願うほど美しく、この舞台を観ただれもが忘れられないシーンの一つになったと思う。
この作品の中心には命の循環の厳しい現実が描かれているが、登場した生き物の言葉や行動はすべて人間のものであり、それを実際の生き物たちのものだと受け取ってしまうと、現実との齟齬が生じる。幼い人たちはそう感じてしまうだろうが、当然成長の過程でその思いは変容していくだろう。
現実の生き物は、親子の情や生への執着、死の恐怖といったものを多かれ少なかれ感じるものであっても、過去を振り返り未来を予測する能力が少ないだけに、生きることに人間よりずっとドライで力強い。また逆に、うさぎのように死の恐怖だけで死んでしまったり、馬のように傷つくとさらに自分を痛めつけて死に向かってしまったりする生き物もあるが、いずれにせよ人間とは違う思考や感情の(またはそれらをもたない)メカニズムの中で生きている。少なくとも、蛙が木の上から街を望んで希望に胸を膨らませたり、亡くなった親や子を思って鳴くことはないが、むしろそれが彼らの強みなのである。
作者はこの作品を、親が子に語り聞かせやすいように工夫し、親と子が一緒に読み考える作品として書いたと述べている。
人間と同じ知能や感情をもってその場に置かれた生き物たちが、それぞれに苦しみあがく姿を見せつけられると、大人はむしろあらゆる生物に勝る知能をもち食物連鎖の頂点に立って地球を破壊しながら「進歩」を遂げている(この点が鳶と全く違うところだ。)人間のおろかさと、その人間たちが作り上げてきた社会のゆがみや矛盾を思い知らされる。われわれは、明日にもいろいろな種類の人間という「鳶」によって殺されるかもしれないし、水爆や原発など人間が作り上げた「鳶」によって死ぬかもしれない。また、人間の業に満ちた所業の結果、近い将来地球そのものがわれわれにとっての「鳶」となって滅亡するかもしれない。
「母たちへの一文」の中で作者は、親という人間は、子どもを木に登らせたがる生き物だと指摘している。わが子に、「弱肉強食」の社会を生き抜かせるため に、誰よりも強く育て誰よりも高く木に登らせようと努力を惜しまず策を講じる。その結果学校は「強者」を育てることを期待されがちとなり、子どもたちは劣等感と優越感の虜となって、ときに仲間をいじめ自らを痛めつけ、ひいては本当の幸せを見失っていくというのであろう。
作者は、この作品によって「母親や子供とともに、この世の平和や戦争のことを考えてみたかった」と言い、「凡庸に生きることが如何に大切であるかを、母親は先ず自分の心の中で抱き取って、子に話してほしい。」と述べている。まさに「ブンナよ、木からおりてこい」とは、世の親と子に向けられた作者の必死の叫びである。もしもこの声が多くの人々の腑に本当に落ちれば、この世からいじめや暴力、そして戦争はなくなるだろう。
だれもが平等に、生きる喜びを味わえる社会。
自然界の食物連鎖はいかに無残でもそれで自然に成り立っており、例えば地球上で初めて声を放った生物といわれる蛙は、数の論理で勝負して太古より今まで生き残ってきた。彼らを本当に脅かしその声を奪いつつあるのは鳶ではなく、作品の最後で姥蛙の視力を奪った農薬である。そして、そんな弱い蛙たちよりもさらに数で勝負して、実のところ地球上で一番繁栄しているのは、ブンナの冬越しの食糧となった虫たちである。
かつて人類は、木から降り二足歩行を始めて巨大な大脳を得た。その結果、食物連鎖の頂点に立っただけでなく、自然界からも逸脱し、個人のあくなき欲望を満足させようとひたすら仮想の「椎の木」を登り続け、かえって心の平安や生きる喜びを失い、ついには自分たちを含めた地球上の生き物の多くを滅亡においやろうとしている。
今日すべての人が作者の「おりてこい」という声に耳をかたむけ、少しでも他人の上に立とうとする貧しい心を捨て、平らな地面の上で、あらゆる国と人々が手を取り合って生きることのできる真に平等な世界を築くことができれば、われわれも土がえるたちも救われるだろう。だが、しかし……。
作者が「改訂版あとがき」を書いてから、今年でちょうど30年である。1986年といえばチェルノブイリ原発事故の起こった年だが、2004年に故人となった作者は、故郷福井で原発事故が起こったことを知らない。そして今、テロに明け暮れる世界の現状を見れば、いかに脳天気な私でも、人類が真に木からおりる日は永遠に来ないかもしれないという絶望感に襲われる。
「ブンナよ、木からおりてこい」
人間は、それぞれの幸せを求めて限られた生を一所懸命生きてきた。それでも世界が平和にならず、悲惨なできごとが起こり続けるのは、みなが必死で木に登り続けているからだ。
作者の込めた思いは深く、それを演じ続ける人々の果たす役割は大きい。現在は観る人の多くが大人であるようだが、作者の望んだように、ぜひ大人と子ども両方に観てほしい。大人が変われば子どもも変わり、子どもが変われば世界が変わるだろう。
いや、まだ陽は沈まぬ。……ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。
(太宰治「走れ、メロス」より)
参考文献
・水上勉 「母たちへの一文」・「改訂版 あとがき」
・「改訂版 長編童話 ブンナよ、木からおりてこい」(若州一滴文庫 1986年)
招待 小・中・高校生の感想文
● 迫力があり、とても印象に残る劇でした。生命が生きるために多くのことをして、いっしょうけんめいに生きていっていることに、すごくおもいがわきました。
十六歳 男(鳴門市)● 鳴門でこんな劇が観られるなんて知らなかった。おもしろかったのでまた機会があれば観たいです。
十三歳 男● おもしろかった。
八歳 男(鳴門市)● 曲がよかった。
九歳 男(徳島市)● この劇の役の人々が、とてもうまかったと思う、しかし、この劇には少し思うものがある。まずこの団体には人がいないんですか?「スズメ」と「ブンナの母親」の役がいっしょというところがおかしい。そして「ばばあがえる」の役者が若すぎると思う。私は中学生なので夜遅いのが少しつらい。ヘビやネズミがきずをおったときのクオリティーが低すぎる!ブンナがいっぴきだけ緑なのは少しかわいそうだ。そして後ろの大きな台が少しクオリティーが低い。フクロウはいらない、スズメに変えるべき。ヘビの衣しょうがかっこよかったので、ほしいです。
ぜひまた見たい。九月の公演もさそってください。来年も見たい!神頼み!お願いします。
十三歳 男 (川内町)● ねずみとブンナの会話とその後の場面が感動しました。ブンナのことを守るブンナのお母さんの勇気がすごいと思いました。劇と音楽が合っていて良いと思いました。私もすいそう楽をやっているのでそれぐらいきれいにふけるようにしたいです。
しゃぼん玉がかえるの死、虫を表わしているのだと思いました。見ているときに考えを友人と交換してみていました。劇を見て色々考えることがいいと思いました。楽しかったです。友人もとてもおもしろかった!と言っていました。みんな体がやわらかいなと思いました。ねずみの生命力がすごいと思いました。九月もさそってください。
十三歳 女 H・I (松茂町)● カエルやヘビたちなどの動物の発言や行動などに人間味があり、カシの木でねずみやスズメなどが言い合う所やトビがきたとき死をゆずりあう場面では、人間関係のドロヌマを見ているようでした。トビにどんどんつれ去られていく所が自然の厳しさや弱肉強食の世界だと思いました。トビが出てきた時の丸い鏡は何ですか?トビが出てきた時の赤い光を良いと思うけど、赤い光をトビの形にした方が、トビが来たという事が伝わりやすいと思います。動物にとても人間味があり、とてもおもしろかったです。九月の公演もさそってください。
十三歳 (北島町)招待 徳島で観た城東中学生
● 今回の「ブンナよ、木からおりてこい」を観て僕は、動物達のざんこくな世界を考えさせられた。人間の行っていることが動物達のすみかをうばっているのがよく分かった。セリフにあった人間のしたことは自分達にかえってくるというのはとても深く心に刻まれた。
身近にいるカエルが鳴いているのは劇中でもあったように親がいなくなったり、食べられたりしてかなしんでいるのは本当なのかもしれないと思った。劇の感想はとても面白かった。特に、ヘビ役の人は悪そうだけど面白くてとてもヘビらしかった。ブンナの動きがとてもキビキビしていて、目が回らないのかなと思った。本当に一生懸命練習しているのが分かったし、さすがプロだと思った。中学生の僕達はまだまだ上手くできないけれど、夏休みや放課後がんばって練習していくのでがんばって今回の「ブンナよ、木からおりてこい」のような面白い作品になるようにがんばっていきたいです。
3年● ものすごくこわかったです。
劇団の皆さんの演技がリアルすぎて思わず目を見張りました。
でも、トンビにつれていかれるシーンは号泣してしまいました。
ねずみがものすごく良い人でした。だけど、他の人はあまり良い人じゃない気がします。特にスズメが良い人ではない気がしました。
後、演出がすごくきれいでした。特に虫をしゃぼん玉で演出していた事が頭にのこっています。
次に劇団の皆さんが公演をするのであれば、また見にいきたいです。
いい劇をありがとうございました。
3年● 今回、青年座の「ブンナよ、木からおりてこい」を観てシビレました。そのとても熱く、すごい熱気が伝わってきて、一気に惹き込まれました。疲れもふっとんだような感じがします。この作品は元々中高生向けに作られた作品でしたが大人が見ても胸にグサグサと響くような感じがした。改めて自然の摂理、生命、業などを考えさせられます。しかし、まったく窮屈さは無かったです。びっくりしました。舞台もシンプルなのに、こった装置になっていて、すごかったです。特にあの木のセットは、とてもビックリしました。主人公のブンナは蛙、登場する蛙達や、蛇、雀、もず、ネズミなどですが、描かれているのは私たち人間のような気がします。「私は弱いだけ、弱いことは悪い事じゃないよね」って雀の台詞とかは、すごく考えさせられました。
今だと、震災や原発事故についても想わずにいられないです。それだけではなく、演出、美術、照明、音楽、音響、そして、役者の人たちの歌と動きと言葉。きいていて、あきないような、見ても、次から次と、驚かされて、すごくたのしかったです。
今回は、このような公演を見せていただき、本当にありがとうございました。
2年● この劇は、最初はブンナって何かわからなかったので、トノサマガエルなんだととてもおどろきました。
感想は、声が大きいし、とてもはく力がありました。やっぱり、中学生、高校生とはちがって、経験があるのでとてもはく力が感じられました。一瞬その劇のストーリーに入ってしまうところでした。主人公のブンナはとても元気があってやんちゃ者のところがとても好きです。なぜかというと、主人公らしいし、僕にちょっとあてはまっていたからです。
木のてっぺんに土があるなんて考えられないと思いました。景色はとてもきれくて、食べる物もたくさんあるなんて、まるで天国だと思いました。現状で思いうかべると、リゾートホテルをイメージしました。
鳶はとてもこわい生き物だと思いました。なぜかというと、普通に生活している動物をおそって餌にしてしまうからです。やっぱり、動物の世界はおそろしいと思いました。
この劇で学んだことがあります。それは、仲間の大切さです。どんなときも、仲間が必要だとこの劇を見て思いました。
僕は9月8日阿波銀ホールで文化祭があって、その時に劇をするけど、この劇で学んだ事や表現、感情を大切にして、劇をしていきたいです。
劇をする目的は、観客全員を笑顔にして、喜んでもらうという目的で、日びがんばっています。
話が変わりますけど、僕の夢は吉本に行くことです。そのためには、日びの努力が必要です。だから、毎日の練習を大事にしていきたいです。
貴重な劇を見せてくださって、ありがとうございました。とても感謝しています。
2年● 楽しませていただきました。みなさんの活きいきした演技と濃密な物語で、あっという間に現実から引き離されていて、没入感におちて観られました。
最も私が印象的だったのは、ブンナが木から帰って来て、仲間に天国はなかったと告白するシーンです。ブンナが高みで見た地獄は、今の現実に似通ったところがあったのを感じ、生き物も人間と同じように過酷な一生を送るのだとしみじみ考えました。そして、生き物にはそれぞれに生きる場所や生き方があることも、人間と他の生き物とが共に生きていく為には、まだまだ打つべき手があることも気付かされました。
そんなステージを、色とりどりの照明の光彩や道具が飾っているのも、ストーリーへ引き込む要素だとも思いました。場面の情景を色濃く連想させる光が綺麗だと感じました。そして、あの丸い回るアスレチックのような台も、面白なと思いました。あそこを登って、木に登っていることをおもわせているのだというのと、上下左右、四方八方に動くことでいろんなものを表現されていて興味深かったです。
プロの演劇を観てみて、「凄い」と思うと同時に、「私もあんな風に演りたい」と感じました。あんな風に輝けたら・・・と、憧れを抱いてしまいました。この公演は、私の中できっかけになりそうです。
濃密で素晴らしい時間を、本当にありがとうございました。参考にさせて頂きたいと思います。
2年● 「ブンナよ、木からおりてこい」を見るのははじめてで、見れてよかったです。
えんぎ力がすごいし、声も大きくきこえやすかったし、アクション的なものもすごくておもしろかったです。
ブンナ役の人の声が好きな声優の声に似ていて、おどろきました。
しょうめいもおんきょうもすごかったです。あと、ぜんたいてきに運動しんけいがいいなと思いました。大どうぐが大きかったので、どうやってつくったのかきになりました。いしょうもかえるっぽくてよかったと思います。
こんな感じのげきが一度してみたいと思いました。
2年● 演技が始まってすぐ、舞台の世界へと飲みこまれました。
目線のひとつひとつ、歩き方などがとてもすごく、これからどうなるのかとドキドキ、ワクワクしながら観ていました。
また、中・高生が演じる劇とはちがい、とても笑える所は笑え、きんちょうする所はするなど、また少し違った世界へと引き込まれたと思います。
今回は、「ブンナよ、木からおりてこい!」を観て、色々なことを学べたと思います。
中学校の部活なので、ここまで真剣に、劇を演じることはできませんが、がんばって、細かい所まで演じてみようという気がしました。
今回の上演、とてもおもしろかったです。ありがとうございました。
2年● はじめて「ブンナよ、木からおりてこい」を見ましたが、とってもおもしろくて、内容もわかりやすかったです。見ていて、楽しくなったり、どきどきハラハラするシーンもたくさんあって、全然あきなかったです。
全体のふんいきだけでなく、役者さんのおもしろい動きに、たくさん笑いました。個人的には、ヘビさんが一番好きでした。
最後のほうで、ブンナ役の人が客席のほうからさけんだときは、近くにいたので、とてもびっくりしました。近くにいたのに、全然気づかなくて、いきなり大声を出したときはとてもびっくりしたけど、その場面はまだ覚えています。
はじめは、少しむずかしい感じのものなのかなと思ったけど、じゅうぶん楽しかったです。とても、きちょうな劇を見れて、うれしかったです。
これから、もっともっとれんしゅうしようと思いました。
これからも、体に気をつけて、がんばってください。おうえんしています。
2年
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