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旺なつきさんに

開演直前インタビュー

楽屋訪問92


 NLTプロデュース公演「MUSICAL O.G.」鳴門例会(2019年3月23日)で“スミ子”役をされる旺なつきさんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

旺なつき

鳴門市民劇場(以下鳴門と略) まず、今回のミュージカルのように二人劇の楽しさ、難しさについてお話ください。

旺なつき(敬称略 以下旺と略) 普段は「アッチ―」「ロムさん」とお互いに愛称で呼び合う仲です。7年くらい前に「ジェーン・エア」という松たか子さん主演のミュージカルに二人とも出演しました。お互いに三役ぐらい演じていたのですが、その中の一役が一緒に出るシーンがありまして、スタンバイしている舞台袖で「いつか一緒にやれたらいいですね」なんて話をしていました。そうしたら、アッチーが「ロムさん本当にやるよ、本当にやる!」っていうから、私は、「やりましょう、やりましょう」って…。結局、彼女が細かいとこまで全部つめてくれて、始まりました。
 『二人で何かをやってみたい』思いから始まっているので、スタンスは一緒でした。いつも出番前に『何があってもやりきろう』と二人でハグして、『さあいくぞ』って。お互いをカバーしながら、絶対に乗り切れるという何か妙な自信が私にはあります。歳は私が3つ上なんですけど、普段は彼女の方がずっとしっかりしていて、てきぱきと何でもやってくれてます。作家の方がそういうこともわかっていて、あて書きしてくれました。二人で演じながら、どこまでが阿知波と旺なのか、カズエとスミ子なのか、わからない状況です。(笑)
 私は演劇というのはキャッチボール、それにつきると思います。最終的には『お客様とのキャッチボール。』映像と違うのはそこですね。そして私は、できることなら一人芝居ではなくて、誰かとその時に産まれるものを大事にしながら芝居をやりたいと、常々思っています。その相手に阿知波さんがいてくださるのは有難いことです。

鳴門 二人だとセリフが多くて大変だと思うのですが?

二人ですから、見ていてわかるんですよ、感じるんですよ。相手の息や感情の流れを。逆に大勢の芝居も大好きですけど、いろんなところに神経を使う。今回は彼女とピアニストと呼び込みの松尾だけなので非常に集中はしやすいです。

鳴門 この芝居の見どころは?

最高の見どころは、『いくつになっても今日が一番若い』ということ。いろんなことを経験して、ある程度歳を重ねた今の二人にしかできないことがやりたい。観てくださる方への応援歌というか、いろんなことがみんなに絶対あるのだけど、頑張って一緒に生きていきましょう、そういうメッセージが伝わればいいなと思っています。
 お互いに抱えている問題がある中で38年間一緒にいたというシチュエーション。逆に、年齢を重ねたとか、皺ができたりシミができたり、たるんだりというそういうことを楽しもう…。そんな感じ。アラ還女優二人、必死になってやっている、それが劇中の役とも重なり、観てくださる全ての方々に対する応援歌になれば一番うれしいですね。

鳴門 宝塚に入ろうと思ったのは?

私は実は宝塚をよく知らないで入ったんです。高校を卒業する時に進路を決定しなければいけなくて、どこの大学を受けるか早く提出しなさいと担任の先生に言われました。小学生の頃からクラシックバレエをやっていたのですが、歌もピアノもやっていませんでした。
 進路を決定するときに、この大学は行きたいけれども今の成績じゃ危ないな、ここも危ないなんて消していっていたら、知り合いが宝塚音楽学校というのがあるらしいよって。勿論存在は知っていたのですが、2年間というのは短大の扱いでリストに入れようかと思って願書を取り寄せました。そうすると受験資格が中卒から高卒までだったので、もし受けるとしたらラストチャンスだと思って、予定通り落ちるだろうけど、まずは経験して落ちて、1年間浪人して、行きたかった大学に行くつもりでした。
 受験生は小さいころからずっと勉強をしてきた人達ばかりで、すごく緊張して、真っ青になって震えているんですよ、試験場で。お母さんもさすったりなんかして、私は何のことかわからなくて、落ちるつもりで行っているし、怖くも何ともなくて、緊張することもなく、それで受かったんだと思います。何故か受かって、そこで人生がガラッと変わりました。
 最初は事故のように入った宝塚ですが、今考えるとあの時に宝塚音楽学校をリストに入れて本当に良かったなと思うほど、大好きな仕事に出会いました。

鳴門 宝塚時代と卒業されてからの演技の違いについて

宝塚というのは良くも悪くも様式美なのです。特に私は男役をやっていましたから、歌舞伎と同じように、どっちの角度でどういうふうにしたら男っぽいのか、洋画を観ながら研究しました。宝塚にいるころから歌と踊りと芝居というと、芝居が一番好きだったんです。自分が思う芝居をしようとしても、それは宝塚にはtoo muchだと。アル中の役が来て、こぼれたお酒をズズッと吸ったりして…。ロム!お前何やってんだ、ここはどこだ宝塚だぞと言われるような子だったんです。アル中だからお酒の匂いがしたらここは拭けない???とか、演出家と喧嘩したりして。最終的には物凄く可愛がってくれましたけど。そういうことが外ではなかった。いつもちゃんと取り組めば思った通りにやっていい世界だった。そういう面では、芝居だけで考えると外に出てからのほうがはるかにやりやすかった。
 ただ、絶対にあきらめないという根性みたいなものは、宝塚時代に徹底的に叩き込まれましたから、それは自分の財産だと思いますね。そして、宝塚にいて本当に良かったと思うのは、同級生という家族のような仲間ができた事。宝塚に行けたことは本当に私にとってラッキーだと思います。

鳴門 仕事以外で好きなこと、興味あることは?

すきなことは温泉、月並みですが食べること、それとウォーキングは体調維持もありますけど、欠かしません。歩くことが結構好きです。同じ道でも全然顔が変わるし、旅公演でもその街を歩きます。それと、下手ですけど食いしん坊なので料理も好きです。

鳴門 演劇鑑賞会について思うことは?今回、鳴門は6年連続会員数クリアしましたが。

クリアを死守することのすさまじさというのは、いつも体調を整えながら、必ずある程度のことをやらなければいけない、我々の仕事に本当に似ていると思います。クリアをし続けるということはすごいと思います。
 演劇鑑賞会の皆様に呼んでいただいて巡ることも何度かあるのですが、いつも思うのは本当にありがたい組織だなと思います。私たちの中では、演劇鑑賞団体さんに呼んでいただけるのはステータスなのです。お呼びがかかったというその段階で乾杯するんですよ。「ウワー、呼んでいただけたのよー!?」と。だから、東京でやって初演だけで終わる作品が多い中で、こうやって取り上げていただいて、こっちから出かけてこられるというのは本当に幸せなことです。何処へ行っても待ってましたよって温かく迎えてくださるのには涙が出そうになります。担当サークルの方々はいつも同志だと思っています。だから、バトンを渡された私達は、今日できる最高のパフォーマンスを必ずやろう!と思うんです。

鳴門 ありがとうございました。

インタビューアー

E-mailでのお問い合わせは、         鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
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