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畠中洋さんに

開演直前インタビュー

楽屋訪問103


 俳優座劇場プロデュース公演「音楽劇 人形の家」鳴門例会(2022年11月7日)で“クロクスタ”役をされる畠中洋さんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

畠中洋

鳴門市民劇場(以下鳴門と略) 140年も前に書かれたイプセンの代表作ですが、それを演じるにあたって感じられていること、気を付けていることがあれば教えてください。

畠中洋(敬称略 以下畠中と略) 音楽が入ることによってすごく新しくなり、お芝居のかしこまっている部分を取っ払うことができたと思いますし、比較的みんな自由に演じていると思います。歌が入ることによって現代劇っぽく生まれ変わったと思うし、セリフも全て歌詞にしてそこにメロディが乗っかって、三幕ものですごく長い作品なんですが、大胆にカットして2時間10分に収めている。展開がスピーディに流れてサスペンス風に進行していく話なので、新たな「人形の家」をお見せできると思います。
 演出家の西川さんから言われたことは、きちんと踏襲しつつ今また新鮮に生まれ変わりつつあるんじゃないか。回数を重ねてきたので言葉のキャッチボールがすごく上手くいっているので、あまり気張らず、その場でどう対応していくかという感じです。

鳴門 クロクスタという役ですが、ノーラを自分の思うように動かそうとする悪役のような人物を演じられていますが、どのように役作りをされたのですか?

畠中 最初凄く迷って、どうしたらよいのだろうと思っていたのですが、西川さんがいろいろ言って下さって、まず動きはゆっくり、ねっとりしゃべる、上目づかい、この三点に気を付けて(笑)。
 でも、結局自分の家庭のため家族のためにしていることなんです。だから実は、悪人ではないんですけど、何かを必死に掴もうとするあまりに卑屈になってしまう。女性に捨てられた過去もあるし、それで子供を押し付けられて、生きていくためにはいろんな危ない橋も渡って、そういう部分ではちょっと卑屈なところがあるんですけど、悪人ではないと思う。なのであまり悪に走らないような感じにしているつもりです。

鳴門 鳴門、四国には2008年に加藤健一事務所の「音楽劇詩人の恋」で来られていますが、鳴門とか四国にどのような印象をお持ちですか?

畠中 渦潮を「詩人の恋」のときの皆で見に行ったんですよ。船に乗って。あれはすごく感動しました。後は、徳島ラーメンがおいしかったという記憶があります。東京にもあるんですけどなかなか食べられないんです。今回も頂こうかなと思っています。まだ行けてないんですけど。

鳴門 この世界に入られたきっかけを教えて頂ければと思います。

畠中 高校生の時に強制的に皆に見せられる芸術鑑賞会っていうのが何回かあったんです。僕は山形なんですけど会館までみんなでゾロゾロ行って。その時、近松門左衛門の「女殺油地獄」っていうのがあったんです。僕は前から2列目ぐらいから見ていて、最後凄いじゃないですか、油でベトベトになりながらのたうち回っている。あのシーンを観たとき、何か客席じゃなくてそっちにいたいなって思ったのがきっかけです。
 それから、山形なのであまり情報がないんですけど、新聞の端の方に載っていたタレント募集に応募して、そこは半年くらいでやめて、青年座の研究所に入りました。2年間勉強させてもらったんですが、君みたいな人間はウチには沢山いるのでと言われて落とされまして、めちゃめちゃ悔しくて。研究所の所長さんからお前にピッタリの劇団があるからって紹介してもらったのが音楽座です。そこで10年くらい演らしてもらって。僕が行った年が音楽座元年、前から音楽座あったんですけど、僕が入った年からまた新たな音楽座となり、土居裕子さんも入り、そこからうわーっと青山劇場という1200人くらい入る劇場で1か月公演をやってチケットがソウルドアウトというとこまで行ったんですが、とあることがあって劇団が解散になってしまいました。  それで今の事務所にお世話になっています。

鳴門 舞台から舞台へと毎日心身ともにお疲れになると思います。何か息抜きをしているのでしょうか。また仕事以外に趣味がありますか?

畠中 僕の場合は散歩とか一人でフラッと近くの日帰り温泉に行くことですかね。
 趣味は映画をみることと料理をすることです。料理って作っているとき無心になれる、集中できるから好きですね。日常的にやっています。嫁さんが忙しいときは僕が作るようにしています。パスタとカレーはおいしいらしいです。

鳴門 ツイッターで喜ばれているのをみたのですが。以前畠中さんが演じられた役を、この度息子さんが演じることになりましたね。どのような心境ですか?

畠中 いやぁ、嬉しいですね。凄く嬉しいです。彼はもともとアニメとか映画の吹き替えとかが専門の声優なんですけど。「シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ」という作品で僕も演った三浦悠介という役を演じます。多分舞台初めてだと思うので、ちょっと背中を押してやりたいなと思ってツィートしたんですけどね。

鳴門 ミュージカルと音楽劇の違いは?

畠中 ミュージカルはあまり心情を表したようなメロディーじゃない。あえて違う。この心情なんだけどちょっとジャズ風にしたりとかちょっと変化を入れてあって、そこに踊りが絶対に入るんです。
 音楽劇に踊りはないんですね。今回の作品はイプセンのセリフの部分を全部歌詞にして、セリフにメロディーをつけているという感じで、曲調もわりとその時の心情をそのままメロディーに出していると思うんです。上田さんが作曲して下さったんですけど、わりと自然の流れに見えていると思います。
 ミュージカルって突然に歌いだしたりするじゃないですか。何でここでこの曲調なんだ?って。もうちょっと悲しいのにジャズ風にアレンジしたり。必ず踊りもあって照明や衣裳も派手ですし、生演奏のオーケストラも入ります。

鳴門 演劇鑑賞会をどう考えておられるかということと、鳴門市民劇場へ何かメッセージをいただけたらありがたいです。

畠中 僕は劇団の人間ではないので、なかなか鑑賞会の地方公演に参加する機会がないんですけど、3か月、4か月前から運営サークルの方々が準備をして、凄く楽しみに待っていて下さる、本当に嬉いことだし、舞台の上で演じていて、それをひしひしと感じられるなって。九州、四国を廻らさせていただいているんですけどすごく感じますね。本当に歓迎して下さって楽しみに待っていて下さって、こんなに嬉しいことはないな、って思います。最後のカーテンコールのときの拍手が僕らの元気のもとです。昨日凄い拍手で迎えてくださったし、なんていうのかな、本物の拍手を舞台で体感できることが癒しになるし糧になるし肥しにもなるし、また明日から頑張らないといけないと思えます。
 今、こういう状況なのでなかなか交流会もできない状況ですよね。皆さんと直接語り合うということができないのが残念です。
 九州も50ステージくらいあったのが30ステージくらいに減ってしまい、コロナということもあって大変だと思うんです。やっぱり生でお芝居を観ることが東京とか大都市じゃないとかなわないけど、こうやって活動を続けていくことで生のお芝居を観る機会が年に6回ある。できればお芝居を沢山の方に観ていただきたいし、続けていって欲しいなと思います。どうしてもやむを得ない状況で無くなってしまった鑑賞会の話を聞くんですが、僕ら役者として頑張ってまいりますのでお互い頑張っていきましょう!

インタビューアー

E-mailでのお問い合わせは、         鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
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