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大川永さんに
開演直前インタビュー

楽屋訪問115



 イッツフォーリーズ公演「おれたちは天使じゃない」鳴門例会(2024年12月24日)で“大塚エミ”役をされる大川永さんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

大川永さん"

鳴門市民劇場(以下鳴門と略) 1974年から50年間上演されてきた作品ですが、長年上演されてきた理由と、50年の間に変わられたところがあれば教えて頂きたい。

大川永(敬称略 以下大川と略) 50年間やっている間に脚本も少し変わりましたし、もちろん演出家や演じるキャストも、50年間同じ人がやっている訳は無いので(笑)、ちょっとずつ変わっています。その間で「生きる」ということのメッセージが絶対的に変わらずに、とても強いものであるっていうのが、この作品の愛されてきた理由だと思います。「前田美波里さんで観ました」っておっしゃる50年前に観た方に出会ったりする機会があったんですが、作品の持っているメッセージというのが、観たことのある方たちにすごく強く刺さっていたからこそ、もう一回観たいという声が全国各地から届いて、2021年のリニューアルにもつながり、今があるんだなって思っています。
 その中で変わったことっていうのは、残念ながら50年前にまだ生きてないですし(笑)、2021年から新しく始まった方に出演しているのですが、前のものは資料映像で観たことがあります。衣装とかセットとか、そういうものは変わっています。音楽っていうのはずっと同じなのですが、少し新しくなっているものもあります。まず最初に流れる「M1(エムイチ)」っていう主役の三人が脱獄する時の音楽は新曲です。あと私の婚約者役の黒川始さんが歌う曲のアレンジがちょっと変わっているって感じですね。メロディラインは同じで、いずみたくの音楽を使っています。あと物語が終わったの時に一番最後に流れている後奏で「翼のない天使」が流れて、そのアレンジが新しくなっています。私はその音楽が今回のこのリニューアルされた作品にとても合っているなと思います。観た方たちがどういう印象を受けるのかっていうのをすごくジーンとしながら私は舞台で感じて、そこが大きく変わったところかなと思っています。

鳴門 作曲家いずみたくさんが創られた劇団とのことですが、「今、今、今」と「翼のない天使」といった歌をどのような想いで歌われているのか教えてください。

大川 そうですね、「翼のない天使」っていう曲に関しては、私の妹役が主には歌う曲なので、どんな想いかっていうのは想像するしかなく、私はそれをお姉さんとして聞くんです。これ2回流れるんですよ、2回歌うんですよ。あ、「うんうん」ってもうご存じみたい(笑)、その感じ方が私も違うし、多分、観ている方々も違うんじゃないかなと、そこが面白いなって思ってたりします。「今、今、今」は、私が歌う曲でもあるし、カンパニー全員が歌っている曲で生きるって大変だなって思いました。いろんなことあるじゃないですか人生、まだ30年ぽっちで何言ってるんだってなりますが、この曲を初めて歌った時にそれを乗り越えないと歌えない音楽だなって思って。だから、その歌を歌う時に決して自分にも、観てる方々にも嘘はつきたくないなっていう、しっかり生きるぞっていうことを考えて感じて届けたいと思って歌っています。

鳴門 演じられている「大塚エミ」は知的障害者の妹にも心優しい姉ですが、婚約者、地元の駐在、キャンパスの助六との関りという難しい役だと思います。演じる上で心がけていることを教えて下さい。

大川 はい、難しいなとは思いますね、確かに。私はミュージカルをやっている人間なんでミュージカルを観にいくことが多いんです。舞台に出てくる登場人物って、現在生きている私たちじゃないかなって思うことが多いんですね。それが宇宙人の話であろうと、きっと誰かが私かもしれないし、私じゃなくても誰かが私の友達かもしれないって思うことが多くて。きっとそれって自分が舞台に立ってても反映されることなんじゃないかなって思います。そうした時に、エミって多分普通って言ったら変なんですけど、普通に生きている人たちに一番近い存在なんじゃないかなって思うんです。だから、私が幸せになりたいとか、ちょっと死にたいとか思ってる感情って、一番観客に近い存在なんじゃないかなっていうのはすごく意識しています。だからちゃんと私が生きることによって、何か皆さんが救われればいいなって思っています。

鳴門 ミュージカル劇団は演技だけでなく、歌唱力とかダンスとかが要求されると思いますが、歌のトレーニングとかダンスのトレーニングはどのようにされているのでしょうか。

大川 それぞれですね。歌っていっても幅が広いし、ダンスといっても幅が広いです。ミュージカルだとロックの作品もありますが、基本的にはバレエが基礎になっているものが多いので、バレエレッスンをやったりとか、歌は本当にそれぞれでやります。声帯って筋肉なんですよ。だから人によって声が違っていて、声帯の強さで音の出る幅も違うし、声帯の強い弱いで喉をどれだけ使っても大丈夫かだとかが全然違うんです。本番前に私たち声出しをしますが、喉が強いから声出ししなくても歌える人もいます。喉があまり強くない人は、私とかもそこまで強くないので、ちょっと声を出して声帯を、筋肉を動ける状態にして声を出します。すみません、今日まだ声出ししてないから、ちょっとガラガラしていて。歌は個人的には、この人の歌い方は素敵だなって思った人の歌い方を研究して、どういうふうに息を使っているんだろうとか。母音の出し方ってわかりますかね。日本語って子音と母音の組み合わせじゃないですか、でも音が鳴っているのは母音なんですね。だから母音をどうやって響かせるかで音が変わってくるんです。この母音をどういう風に響かせたら、どういう歌になるんだろうとかを私は考えるって言うか、研究したりしています。

鳴門 大川さんは鳴門に来られたことはありますか?

大川 2017年(注:11月例会)の「青空の休暇」、実は出演者じゃなくて、旅公演の制作で来ました。「作品に出たいです、出たいです」って言い続けてたけど出られる枠が無かったんです。だけど作品に関わりたかったから、制作で一緒にこちらに来て、「こんどは絶対出演者で来たいですって多分言ったと思うんですよ、すごい悔しかったんで。その時はもうちょっと若かったし、観光するぞみたいな脳みそが無かったので(笑)。でも鳴門って言われると、渦潮が見られる場所だってずっと思っていて、東京のおバカさんだからずっとそんな風に思ってたら、あれっていつでも見られるものじゃないみたいと言うことを最近知りました(笑)。1か月前に徳島に来た時にもどこにも行ってないですね、今回の旅行程がほんとにもう、全然観光できる余裕がないんです。私も仕込みをする人間なんで、朝9時から搬入して、仕込みます。お昼ちょっと時間が空くんで1時間くらい昼寝したりして、そして本番。だいたいワンステージが多いので、(セットを)ばらして、夜11時ぐらいにホテルに着いて、次の日に移動して、朝9時から仕込んでということをやっています。先月、徳島に来た時は観光してないですがラーメン食べました。きょうもラーメン食べました(笑)。

鳴門 こういうお仕事をされるきっかけってなんですか?

大川 そうですね、たぶん一番のきっかけは、私が小学4年生の時かな、いわゆる市民ミュージカルっていうのに参加したんです。その時の印象が強くて、自分から出たいって言ったわけじゃなく、よくある親が「行ってこーい」みたいな、「知らない人とちょっとなんかやってこーい」みたいので行ったのがきっかけなんです。結果楽しかったなーっていうのが残ってて、それでずっと、高校も普通科に通ったし大学進学も考えてたんですが、しっかり考えたら、ミュージカルをちゃんとやりたいのかもしれないなってことで専門学校に進んで、卒業して、そのままイッツフォーリーズ(以下;フォーリーズ)に入団しました。(フォーリーズ一本だったんですか?と質問があり)あー、いやすみません、劇団四季志望でした(笑)。劇団四季を受けている時に、フォーリーズのもうお辞めになっている先輩を知っていて、フォーリーズにいた時の人たちと共演経験があったクラスの先生が「はるかはフォーリーズなんか合うと思うよ」って先生から言われてたんです。でも話半分くらいにしか聞いてなかったんです。四季のオーディションに行き、その会場ですぐ合否が出て、不合格だったんです。じゃどうしようかなって時に、あんまり事務所に所属するつもりがなかったので、劇団がいいなって思ってたから「あ、そういえば先生そんなこと言ってたな」って思って、オーディション日を調べたら、まだ書類が間に合ったんですよ、フォーリーズのオーディションって「作品を観たことがある人」って条件があるんですね。それで、なんか観たことあるやつないかなって見てたら、小学1年か2年の時に、これもフォーリーズの代表作なんですけど「ルドルフとイッパイアッテナ」って作品があって、それを観てたんですよ、たまたま。それを「観ました」って書いて書類を出して、オーディション受けました。ちなみに22歳の頃に「ルドルフとイッパイアッテナ」の作品でルドルフ役を射止めました(拍手)。その時のオーディションでは自由曲ひとつ、ピアノ弾いてくれる方がいるので譜面を持っていくのと、あと振り付けは当日課題で、当日その場でこれ踊ってくださいって見せられるので、覚えて、セリフも当日課題でしたね。私の時は「見上げてごらん夜の星を」の最初にヒロミさんっていう秘書の役が電話でずっと一人芝居してるシーンがあるんです。黒電話で「郵政省の方もがんばってると思うんです」みたいなセリフがあって、その課題でした。私、そのあとに「ヒロミ 演ってます。私の頃は井上一馬さんが目の前にいて、それこそ「あーなんか『ルドルフとイッパイアッテナ』観てるんだって みたいな。つっこまれちゃったらやばいと思うじゃないですか。「はい」とか言ったら、「俺出てた」(笑)。あとみんなでシアターゲーム、即興でみんなで急にやるというオーディションがありました。瞬発力とか協調性とかを見る審査ですね。「みんなで滑り台を作ってください」とか言われるんです。5人とかで「並んでください、じゃ滑り台作ってください」みたいな感じです。お互いしゃべらないから、どういう滑り台になるかとか打ち合わせはしないので、誰かがこうやってやったら、それは何だ?って考えて、どんどんくっついていくっていうそんな感じですね。

鳴門 仕事以外で好きなこと、興味のあること、趣味とか教えて下さい。

大川 私は外に出るのが結構好きなんです。インドアよりアウトドア派なんで。外の何か知らない土地の景色を見るのが好きですね。なので巡演は多分性に合ってます。実家も東京なので田舎とかも特にないし、東北とか行くとあっちは寒いから紅葉とかも早いんですよね、こんなにすごい真っ赤な紅葉見たことないとか。この間、山陰地方に行った時に雪が降ったんですよ、たまたま。東京じゃ絶対に降らない、花の結晶みたいな雪とかちょっと感動して。自分にとって真新しい体験とか感覚を味わえた瞬間に楽しいと思うので、それを経験できる環境に行くことがすごく好きだったりしますね。それが観光とかにも意外とつながっているのかなと思うんです。あと、ちょっと変わっているかもしれないですが、恐竜とかが好きです(笑)。人類がどうやって誕生してきたかみたいなのが面白いと感じる。ナポレオンとか、そういう歴史じゃなくて、人間にたどり着くまでに地球上に生まれた生命体が過去四度ほど絶滅の危機に瀕して、微生物だったのが恐竜になったり、恐竜がだめになったと思ったら哺乳類の時代が来て、それもだめになっていくのかなみたいに。いま人間がいるじゃないですか、でもこの先どうなっていくかわかんないところが好きです。ちょっと変わっているかもしれません。(福井の恐竜博物館に行かれましたかとの質問があり)行ってないんです、まだ。福井は体育館の巡回公演で行ったことがあります。駅前に恐竜がたくさんいるんですよ、それは体験しました。

鳴門 今回も運営サークルの方たちががんばってプラス5名でクリアで迎えました。一緒に私たちもやっているという感覚なんですが、演劇鑑賞会にも一言お願いします。

大川 そうですね、私は東京の公演に出ていることが多いんですね、まず大前提として。それは多分ミュージカルだからっていうのがあると思うんです。東京のミュージカルを観に来るお客様っていうのは、その人のファンとかが結構多いんですよね、だから何しても笑ってくれるし、何しても「かわいい、かっこいい」ってなる。それは、出てる側としてはうれしいし、全然知らないファンのお客さんが好きになってくれたら「よっしゃー」ってなるので、いいところも悪いところもあると思うんです。演劇鑑賞会の方は、もちろん横掘さんのファンですって方もいらっしゃったりはするんですが、作品を好きで、作品が観たいっていう方が殆どなので、熱が違うっていうか、客席の温度が、俳優さん見るぞみたいな熱とはまた別の、作品が観たいんだな、作品を愛して下さっているんだなと思います。こういうのがあるから50年続けてこられてたっていうことと繋がっていくんだろうなっていうのはすごい感じますね。それはありがたいことですし、これきりじゃなくて、また2017年の時みたいに「また来たいです」って言って、また来られる日があったらいいなって思いますね。ただ一言言っちゃうと、毎日仕込んでばらして、仕込んでばらしてっていうのは大変なんで、もうちょっと観光できるようだったらいいなと思います。鳴門の渦を見に行ったりとかね(笑)。

インタビューアー

E-mailでのお問い合わせは、         鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
まで。