しゃぼん玉

劇団文化座　公演

俺はただ、生きているだけのしゃぼん玉だ……。
どこかに着地しようとすれば割れてしまう、
誰かに触れれば壊れて消えてしまう、しゃぼん玉……

　幼い頃から肉親の愛情に恵まれず、周りに誰一人頼る者もない孤独な青年、伊豆見翔人（藤原章寛）はアパートも追われ、生きるために見知らぬ町でひったくりや強盗傷害事件を起こしては、ヒッチハイクの逃亡生活を続けていた。

　「坊ぅ……、坊ぅ……」ある日、彼は山中で怪我を負ってうずくまる老女スマ（佐々木愛）と出逢う……。

　そして、平家の落人伝説がまことしやかに語り継がれる、宮崎県の辺境・椎葉村の小さな一軒家で、翔人とスマの奇妙な共同生活が始まったのだった……。

公演ちらしより

　この度は、『しゃぼん玉』を例会に取り上げて頂きまして、ありがとうございます。

　皆様とお会いする頃、私はもう八十一才になる頃ですが、この境遇を明るくとらえて“人間、年を取ることは必ずしも悲しい事、悪い事ばかりではないな…” と、思うようになりました。その結果生まれたのが、この作品です。

　私が演じるスマ婆は、美しくも、聡明でもなく、どこにでも居る田舎の婆さんです。でも、なぜか人に好かれます。

　実を言うと私の男の子の二人の孫が、この作品が大好きなのです。この作品を観て、劇団に入団してきた男子もおります。

　会員の皆様はこの機会に、お子様やお孫さんをお誘いになってみては如何でしょうか？普段一緒に生活していてもなかなか近寄れない老人と若者の、ちょっと照れくさいような距離感を、この作品はもしかしたら埋めてくれるかも知れません。

皆様とお会い出来る日を楽しみにしております。

文化座　佐々木愛

公演ちらしより